研究課題/領域番号 |
18H02173
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岡崎 桂一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20270936)
|
研究分担者 |
深井 英吾 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00570657)
柿崎 智博 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 主任研究員 (30547229)
藤本 龍 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (60620375)
板橋 悦子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 主任研究員 (70783273)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | キャベツ / ハクサイ / 春化 / イントログレッション / RNAseq / エピゲノム |
研究実績の概要 |
ハクサイのAゲノム背景にキャベツ(CC)の緑体春化遺伝子を持つ系統を育成するためBC2F2世代の選抜を行った。また,春化要求性の強い合成ナタネと要求性が低いナタネのF2集団を用いて春化要求性のQTL解析を実施し解析中である。 春化関連遺伝子のエピジェネティクス解析では,B. rapaの2系統を用いて、低温処理前後でH3K27me3の分布をゲノムワイドに調べた結果,H3K27me3の分布は低温処理によって大きく変化しないことが分かった。その一方、4つのBrFLCパラログの遺伝子座では、低温処理によりH3K27me3の蓄積が転写開始点付近に蓄積する事が明らかとなり、BrFLCの発現低下と関連性が見られた。低温処理後に常温生育条件に戻した後、H3K27me3は4つのBrFLCすべてにおいて、FLC遺伝子全体に広がっており、これにより、BrFLCの発現抑制が安定的に維持されると考えられた。 低温処理に対して葉齢依存的な発現変動パターンを示す遺伝子を同定するため、キャベツ倍加半数体系統を用いてRNAシーケンス解析を行った。低温感応可能な葉齢への相転換前後各々の植物体に対し、低温を与えない試験区、8週間の低温処理を与える試験区、低温処理後さらに2週間室温で栽培する試験区を設定し、葉齢間の発現変動遺伝子を抽出した。シロイヌナズナの葉齢依存的な花成経路で機能するSPL3の相同遺伝子が相転換前後で発現量が増加していた。さらに、RT-PCRの結果、SPL3の発現を負に制御するmiR156の前駆体遺伝子に相同性のある転写産物量が葉齢依存的に減少していた。このことから、miRNAとSPLを介した葉齢依存的な花成制御機構がキャベツにおいても保存されており、キャベツにおける春化応答に関与する可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた,緑体春化ハクサイ,種子春化キャベツの育成のための交雑集団の育成やハクサイ,キャベツのRNA-seqおよびエピジェネティクス解析による開花関連遺伝子の発現解析やセイヨウナタネの春化遺伝子の解析を実施でき,これらの成果の一部は学会や論文として発表できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,緑体春化ハクサイ,種子春化キャベツの育成においては,BC2,BC3個体の育成と添加染色体の確認を実施するほか,キャベ ツのRNA-seqのデータ解析と春化関連遺伝子の発現解析および品種間比較等を引き続き行う。本年度は新たに,種子春化型のハクサイ×育成系 統(ハクサイ×キャベツの後代より選抜し,ハクサイより春化要求性が高まった系統)のF2を育成し,春化要求性のQTL解析を実施する。また ,セイヨウナタネの春化特性の解析では,イスズナタネ(春化要求性弱)×WH(春化要求性強)のF2集団の春化特性の解析を行うほか,合成ナタネおよび通常のナタネを用いて無処理と春化処理区でのRNA-seqテータ解析を行う。
|