研究課題/領域番号 |
18H02175
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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研究分担者 |
間野 吉郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, ユニット長 (20355126)
高溝 正 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 再雇用職員 (00355124)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トウモロコシ / テオシント / 耐湿性遺伝子 / 酸素漏出バリア / マッピング |
研究実績の概要 |
作物の耐湿性向上のためには、植物の地上部から根(根端)への効率的な酸素供給が重要である。そのためには根の基部で根外への酸素漏出を防ぐ酸素漏出バリア〔Radial Oxygen Loss(ROL)バリア〕の形成が必須となる。これまでに耐湿性の高いZea nicaraguensis(ニカラグアテオシント)の根でROLバリアが形成されることを明らかにしている。その後のマッピングにより、ROLバリア形成を制御する遺伝子領域を、ニカラグアテオシントゲノムの第3染色体の短腕領域にまで絞り込んでいる。今年度は、ROLバリア形成遺伝子領域のマッピングを継続し、ROLバリア形成制御遺伝子の極近傍のDNAマーカーを用いたファインマッピングを行い、1つの候補遺伝子にまで絞り込んだ。この遺伝子がROLバリア形成部位である根の外層で発現するかどうかを確認するために、レーザーマイクロダイセクションおよび定量RT-PCRにて組織別の発現解析を行ったところ、根の外層で発現することが明らかになった。また、この候補遺伝子がROLバリア形成に関与するかどうかを確認するために、トウモロコシ自殖系統Mi29に形質転換を行った結果、再分化個体を得ることができた。さらに、、組換え系統にMi29を2回戻し交配して作出した系統を選抜して、ROLバリア形成制御遺伝子を含む純度の高い準同質遺伝子系統〔Near Isogenic Line(NIL)〕を作出した。2019年度に、NILを用いてROLバリアの構成成分の解析や耐湿性検定などを進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、ROLバリア形成制御遺伝子の極近傍のDNAマーカーを用いたファインマッピングによって候補領域の絞り込みを行い、1つの候補遺伝子を特定できた。特定した候補遺伝子が根のROLバリア形成部位(外層)で特異的に発現するかどうかを明らかにするために、レーザーマイクロダイセクションにより根の外層、皮層、中心柱等の組織を単離し、定量RT-PCRにて組織別の発現解析を行った。また、候補遺伝子がROL バリア形成制御に関与するかどうかを確認するために、トウモロコシ自殖系統Mi29に候補遺伝子を形質転換し、再分化個体を得た。さらに、組換え系統にMi29を2回戻し交配して作出した系統を選抜して、ROLバリア形成制御遺伝子を含む純度の高いNILを作出した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)NILとトウモロコシMi29を用いて、ROLバリア形成条件で生育させた植物の根からRNAを抽出し、RNA-Seq法による網羅的発現解析を行う。NILで特異的に発現する遺伝子の中に、ROLバリア形成制御遺伝子の 制御下にある遺伝子が存在するはずであるので、それらの推定される機能からROLバリア形成制御機構を明らかにする。 (2)NILとトウモロコシMi29をポット栽培して耐湿性検定を行い、植物体の地上部および地下部の乾物重、草丈、 葉数、葉色、根の長さなどを測定して、供試材料の耐湿性を評価する。 (3)候補遺伝子を遺伝子導入した形質転換体(T1世代)における導入遺伝子をPCRにより確認した後、水耕栽培にて嫌気処理を行い、ROLバリアが形成されるかどうかを評価する。
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