研究課題
申請者らは、これまでの研究で、タルホコムギ(Aegilops tauschii)の遺伝的多様性を導入したコムギの多重合成コムギ派生系統(Multiple Synthetic Derivative, MSD)集団を開発し、アフリカ・スーダンの高温ストレス圃場において栽培し、複数の高温耐性系統を選抜した。また、これら系統の高温耐性は、人工気象器内においても、再現することができた。そこで、本研究では、高温耐性系統と通常系統の分離集団を用いた遺伝分析により、1)これら系統の高温耐性に関わる量的遺伝子(QTL)を同定する、2)QTLを同一の遺伝的背景に持つ準同質遺伝子系統を作成する、3)QTLを識別し高温耐性育種に利用できる選抜マーカーを開発することを目的として行っている。本研究により、高温耐性の育種および生理学的研究の基盤を作ることができ、高温耐性育種を分子育種学的に進めることができる。1年目(H30年度)は、MSD集団からランダムに選んだ400系統をDArTマーカーで栽培し、穂色、出穂日、帯城性等特徴的な形質についてアソシエーション解析を行い明瞭なQTLが検出できることを確認した。この系統を用いて現在、高温耐性に関するQTLを行っているが、出穂日と耐性に強い相関があり、これら両形質の切り離しが問題となった。そこで、耐性を示すMSD集団の遺伝子型から判定できた、一次合成コムギ2系統と農林61号のBC1F1世代に戻り、そこから世代促進法を駆使して、BC1F4世代の組換え純系系統の種子を作成した。
2: おおむね順調に進展している
2年目(H31/R1年度)は、世代促進を行うために、閉鎖温室で夏期に栽培しBC1F5の種子を採集した。これを、圃場に栽培して農業形質を調査中である。また、温耐性QTLをもつ染色体部位のみを農林61号の遺伝的背景に持つ準同質遺伝子系統の作成のために、耐性を示すMSD系統と農林61号のF1雑種を交配し、これを自殖させてF2系統を栽培し、自殖させてF3世代を得た。さらに、世代促進の速度を速めるために、5mlのピペットチップとホルダーを利用した半水耕栽培を導入し、その条件検討を行った。
今後、組換え近交系統の種子を増殖させ、スーダンの高温圃場で農業形質を調査する。同時に、DArTマーカーでジェノタイピングを行い、高温耐性のQTL解析を行う。
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