Argonaute(AGO)タンパク質は、20から30塩基長のsmall RNAをガイド配列として取り込み、ガイドと相補的な配列をもつ標的RNAと結合し、遺伝子のサイレンシングやクロマチン修飾などを制御する。今年度は、生殖細胞特異的に発現するイネAGOタンパク質MEL1について、MEL1が標的とするRNA分子の特定を行った。具体的には、減数分裂期の葯で発現するMEL1とMEL1結合RNAを架橋した後、MEL1に対する特異的抗体を用いて免疫沈降シーケンスし、MEL1標的候補配列を解析・抽出した。その結果、9つのRNA配列が有力な候補として浮上した。候補9配列の1つは、減数分裂直後の花粉形成での機能が報告されている遺伝子の転写産物の一部と一致した。この結果は、減数分裂期あるいはそれ以前の葯において、当該遺伝子が花粉形成期以前に誤作動しないための、いわばセーフティーロックとしてMEL1が機能する可能性を示唆している。別の標的候補配列は、MEL1の減数分裂期エピゲノム修飾への関与を示唆する遺伝子転写産物と一致した。現在は、上記のような仮説を検証するための各種形質転換イネ作成を進めている。 MEL1とは異なるイネAGOタンパク質とGFPの融合タンパク質(AGO-GFP)を発現する形質転換イネの葯を観察したところ、AGO-GFPが減数分裂細胞核に高度に蓄積することを見出した。AGO-GFP特異的抗体を作成して減数分裂期葯を用いた免疫沈降シーケンスを行い、AGOガイドRNA配列を網羅的に解析した。その結果、AGOガイドRNAの70%以上は、減数分裂特異的に葯で発現することが知られるタイプのsmall RNAであることを明らかにした。現在、ago変異体を作成しており、減数分裂における表現型解析などを行う予定である。
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