これまでに、休眠性の非常に強い祖先型野生オオムギ系統「H602」と休眠性をほとんどもたない醸造用オオムギ品種「関東中生ゴールド」の組み換え近交系統を用いた種子休眠性のQTL解析より、2つの主要な種子休眠QTL Qsdw-5H 及びQsd2-OKを見いだしている。本研究は、これらQTLの精密マッピングを進め、原因遺伝子の単離を目指すことを目的とする。 本年度は、精密マッピングのために必要な組み換え個体の育成を進めた。Qsdw-5Hに関しては、F4世代で遺伝子型を調べ、組み換えが起きた個体を選抜、後代の種子を昨年秋に圃場に植えた。現在、育成したF5世代のQTL領域の遺伝子型の決定を進めている。今後、遺伝子型と発芽率の対応を調べ、後代検定によるマッピングを進める予定。Qsd2-OKに関しては、QTL領域の遺伝子型の違いにより表現型の差がよりはっきり区別できると予想された系統間で交配を行い、新たにF2集団を作出、昨年度から圃場で育成していた。本年度は、このF2集団(約480個体)から種子を収穫し、遺伝子型と発芽率の相関を調べた。当初の予想通りQTL領域の遺伝子型と発芽率の間にはっきりとした相関が検出できた。この結果から作出した集団は、Qsd2-OKの精密マッピングにより適した材料であることが明らかになった。さらに、QTL領域を絞り込むためF2世代の遺伝子型を調べ、QTL領域内で組み換えが起きた個体を選び、その後代を圃場で育成している。今後、種子を収穫、発芽試験を行い、遺伝子型と発芽率の分離の相関を調べQsd2-OK領域の絞り込みも進める予定。
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