研究課題/領域番号 |
18H02189
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
望月 俊宏 九州大学, 農学研究院, 教授 (60239572)
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研究分担者 |
安彦 友美 九州大学, 農学研究院, 助教 (00743882)
高橋 宏和 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (50755212)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ダイズ / 耐湿性 / 嫌気耐性 / 通気組織 / プログラム細胞死 / 破生細胞間隙 / 不定根 |
研究実績の概要 |
嫌気条件下においても根の伸長抑制程度が小さい伊豫大豆(嫌気耐性品種)と伸長抑制程度が大きいタチナガハ(嫌気感受性品種)、および両者の交配に由来し、嫌気条件下において根の伸長抑制程度が小さい準同質遺伝子系統(NIL9-4-5;タチナガハを遺伝的背景として第12染色体の一部を伊豫大豆型で持つ)を供試した。播種後7日目の幼苗を用い、グロースチャンバー内において、1/10・Hoagland 溶液下で7日間の水耕栽培を行った。対照区では水耕液に絶えず空気を循環させ、嫌気区では溶存酸素濃度を1.0mg L-1以下に調整した水耕液を用いた。処理の前後でそれぞれスキャン画像を撮影し、処理前に発根していた根(既存の根)と処理期間中に新たに発根した根(新規の根)を区別するとともに、一次側根および胚軸根に分けて根長を測定した。処理終了後、それぞれの根の基部と根端から10mmの部位、およびその中間の部位を採取し、プラントミクロトームを用いて横断切片を作製、検鏡し、通気組織形成率[通気組織の面積/根の横断面積×100(%)]を求めた。 その結果、嫌気条件下における根の伸長について見ると、伊豫大豆およびNIL9-4-5では既存の根においても伸長が認められたのに対し、タチナガハではほぼ停止した。新規の根はいずれの品種・系統においても発根、伸長したが、総伸長量、1本あたりの伸長量ともに伊豫大豆およびNIL9-4-5で大きかった、嫌気条件下における通気組織形成について見ると、既存の根ではいずれの品種・系統においても形成が認められなかったのに対し、新規の根では伊豫大豆およびNIL9-4-5の基部と中間部において形成が認められた。また、以上の結果をもとに、レーザーマイクロダイセクション(LMD)法によるLMD-qRT-PCRの実施のための最適条件について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果から、嫌気耐性品種、嫌気感受性品種ともに嫌気条件下では新規の根の伸長が顕著であったが、嫌気耐性品種において新規の根、既存の根ともに伸長能が高いことが明らかとなった。また、嫌気耐性品種では新規の根の伸長能が高く、通気組織形成との関連も示唆された。さらに、嫌気条件下における根の伸長抑制程度に関連するQTLを持つ準同質遺伝子系統(NIL9-4-5)は、通気組織形成においても嫌気耐性品種と同様の反応を示すことから、このQTLあるいはQTL領域は、嫌気条件下における根の伸長抑制程度と通気組織形成能を制御していることが強く示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の実験において、伊豫大豆(嫌気耐性)は、嫌気条件下においても新規の不定根(新規胚軸根を含む)を良く発達させるとともに、皮層中に通気組織(破生細胞間隙)を形成することが明らかとなった。一方、タチナガハ(嫌気感受性)では、新規の不定根の伸長は小さく、通気組織の形成もわずかであった。また、NIL9-4-5は伊豫大豆型の反応を示したことから、嫌気条件下において通気組織形成を調節する遺伝子と、不定根の伸長を調節する遺伝子は共通しているか、少なくとも近傍に存在していることが示唆された。そこで本年度は、タチナガハ/ヘテロ型系統から得られた個体(種子)からDNAを採取し、多型検出によってタチナガハ/伊豫大豆型の組み換え個体を選抜し、さらなる候補領域の絞り込みを行う(九州大学)とともに、親系統ならびにNILを供試して根の皮層細胞からレーザーマイクロダイセクション(LMD)法を用いて切片を作成し、LMD-qRT-PCRを行うことにより、候補遺伝子を絞り込む(名古屋大学)。これらの情報をもとに、嫌気条件下において通気組織形成を調節する遺伝子と不定根の伸長を調節する遺伝子の関係を明らかにするとともに、その機能について考察する。
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