嫌気条件下における総根の伸長量を指標とした場合の嫌気耐性品種 ‘伊豫大豆’ と嫌気感受性品種 ‘タチナガハ’およびタチナガハ/伊豫大豆の交配後代より作出された準同質遺伝子系統(NIL -9-4-5)を実験に供試した.播種後7日目の幼苗を用い,グロースチャンバー内において,1/10・Hoagland溶液下で7日間の水耕栽培を行った.対照区では水耕液に絶えず空気を循環させ,嫌気区では溶存酸素濃度を1.0mg/L以下に調整した水耕液を用いた.処理前に発根していた根(既存の根)と処理期間中に新たに発根した根(新規の根)を区別し,さらに発根部位により胚軸から発根した根(胚軸根)と主根から分岐した根(一次側根)に分けて根長を測定した.処理終了後,それぞれの根の基部から10mmの部位,根端から10mmの部位,およびその中間の部位を採取し,プラントミクロトームを用いて横断切片を作製し,通気組織形成率[通気組織面積/根の横断面積×100(%)]を求めた. その結果,嫌気条件下において,既存の一次側根および既存の胚軸根,新規の一次側根の総伸長量は,伊豫大豆がタチナガハより大きかったが,新規の胚軸根では差が認められなかった.根1本あたりの伸長量は,いずれの根においても伊豫大豆が大きく,タチナガハでは既存の一次側根の伸長が完全に停止した.通気組織は嫌気条件下の胚軸根基部において形成が認められたが,新規の胚軸根の中間の部位では伊豫大豆においてのみ形成が認められた.NILは,嫌気条件下における根の伸長および通気組織の形成に関して,伊豫大豆と同様の傾向を示した. 以上の結果から,新規の根の形成と伸長が嫌気耐性に大きく寄与しており,さらにその伸長と通気組織形成には遺伝的関連のあることが示唆された.
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