研究実績の概要 |
本研究では、キクの光周性花成反応における特徴的な暗期長認識機構を明らかにするため、短日条件下でも不開花となる恒常的活性型フィトクロム (PHYB)過剰発現体 (BYH)を用い、活性型PHYBの下流で機能する概日時計関連遺伝子のスクリーニングおよび機能解析に取り組んだ。予備的なカスタムアレイ解析においてBYHで発現上昇がみられた概日時計遺伝子CsGI, CsPRR7/37について先行して過剰発現体およびCRISPR/Cas9による遺伝子破壊株の作出に取り組んだ。CsPRR7過剰発現体 (PRR7-HA)、および転写抑制ドメインを付加させたPRR7-SRDX過剰発現体の開花反応を調査した結果、それぞれ野生型と比較して開花抑制、開花促進の表現型を示し、CsPRR7が開花抑制に機能することを確認した。一方、キクタニギクにおけるCRISPR/Cas9による変異導入効率が極めて低いことが判明したため、Cas9の転写・翻訳量を上昇させる目的として翻訳エンハンサーとHSPターミネーターを、さらにgRNAの転写量を上昇させる目的としてキクタニギク内在性のU6 (CsU6)プロモーターを4種類単離し、それぞれバイナリーベクターに組み込んだ。2019年に公表されたキクタニギク全ゲノム配列を利用し、BYHにおいて発現変動する遺伝子をRNA-seqにより網羅的に解析し、ほぼ全てのキクタニギク概日時計関連遺伝子の発現変動を明らかにした。またキクタニギク概日時計の明暗周期による同調メカニズムを明らかにするため、様々な光周期条件下で詳細な発現解析を行った結果、キクタニギクでは調査した全ての概日時計遺伝子の発現が暗期開始時に同調を受けており、シロイヌナズナやイネ、さらには同じ絶対的短日植物のアサガオとも異なる仕組みにより暗期の長さを認識している可能性が明らかとなった。
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