研究課題/領域番号 |
18H02195
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河鰭 実之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (10234113)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | LED / 変動光 / 紫外線 |
研究実績の概要 |
LEDによる人工光型植物工場が普及しつつあるが、広汎な植物が栽培されるようになり、太陽光下における栽培とは生産物の品質に差異があることがしだいに明らかになっている。例えば、トマトを白色光LED下で栽培すると、葉にカルス状の組織が形成されて、品種によってはほぼ完全に落葉してしまい、正常には成育しない。これらの症状は紫外線の照射によって防ぐことができる。特に、UV-B領域の紫外線は有効であった。 紫外線照射のためには、現在は安価で普及可能なLEDが未だに開発されておらず、紫外線以外の方法による代替が求められる。本研究では、特に可視光の変動によるストレスによる効果を調べた。現在までに、明期暗期を2:1の比率で、秒単位、分単位、10分単位で処理を行ない、それがレタスのアントシアニン蓄積、およびトマト苗の生育に及ぼす影響を調べたが、明らかな効果は認められなかった。また、別のストレスとして、根に酸化ストレスを与えることが示唆されているナノバブル処理を行ったが、これも明らかな効果はなかった。 紫外線は、活性酸素を生じさせるため、活性酸素の発生により様々な効果があると推測される。しかし、活性酸素発生と関係が示唆されている変動光処理やナノバブル処理により代替することができなかった。これらの処理により葉に発生する活性酸素は想定よりもかなり低いことが推測される。 また、植物工場内で栽培する赤系レタスは、紫外線を当てても屋外ほどアントシアニンを蓄積することはなかった。植物工場内において作物が受けるストレスの程度はかなり低いと思われる。夜間の低温は植物に対してストレスを与えるので、今後は温度管理と組み合わせて変動光の影響を評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変動光による効果を期待して広範囲に処理を行ったが、その処理範囲では明らかな効果は認められない。これは、当初の仮説とはことなり変動光による影響は、紫外線そのものと比べ影響が小さいことが示唆された。成果は必ずしもポジティブではないが、仮説に対する答えは出つつある。
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今後の研究の推進方策 |
植物が受けるストレスとしては温度ストレスの影響は強い。ストレス応答として知られている代表的な効果は葉におけるアントシアニンの蓄積である。アントシアニンの蓄積は昼夜の温度格差が重要であることは以前から知られており、生産現場では生産地における昼夜の温度格差は重視される。特に夜間の低温はアントシアニンの蓄積を促進することが知られている。今年度行った実験では、植物工場内で栽培する赤系レタスは、紫外線を当てても屋外ほどアントシアニンを蓄積することはなかった。これまで、温度環境を大きく変える装置がなく、温度と光強度変動との関係を調べられなかったが、15℃程度の低温にできる栽培装置ができたので、これを使ってさらに、変動光の影響を調べる予定である。
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