研究課題/領域番号 |
18H02198
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山根 久代 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80335306)
|
研究分担者 |
玉田 洋介 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (50579290)
富永 晃好 静岡大学, 農学部, 助教 (50776490)
羽生 剛 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (60335304)
高居 恵愛 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (70589770)
池田 和生 山形大学, 農学部, 准教授 (80555269)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 休眠 / MADS-box / 転写因子 / 果樹 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,低温要求量に多様性をもつバラ科果樹を材料にした,低温要求性の遺伝的主要制御経路の解明とその知見の応用である.「休眠芽が低温蓄積をどのようにカウントし,どのような代謝経路が活性化することで,萌芽準備段階へとフェーズを転換させるのか,さらには低温要求性の種間,品種間差異がどのように生じ進化していったのか」につ いて申請者が得ている手がかりを元にした独自の仮説を検証するかたちで研究を進めた.以下に研究項目ごとの概要を詳述する. ①ウメDAM6遺伝子の機能解明:バラ科サクラ属果樹の低温要求性制御経路にはDAM6遺伝子発現が関与する.過剰発現体による機能評価試験の結果,DAM遺伝子は休眠芽においてABA蓄積ならびにサイトカイニン蓄積抑制を介して成長抑制ならびに発芽抑制機能を担っていることを明らかにした. ②ウメ発芽早晩性QTL領域の特定:F1シュードテストクロス集団を用いたQTL解析より,第4連鎖群末端に発芽日・低温要求性・高温要求性QTLを検出した.本QTLにはDAM6遺伝子の転写制御に関わる因子も座乗する可能性が見いだされた.発芽早晩性が多様なウメ約100品種における多型解析により,このQTLは多低温要求性・多高温要求性・晩期発芽に関係していることが示唆された. ③リンゴFLC-like遺伝子の機能解析:バラ科リンゴの低温要求性ならびに高温要求性制御経路にはFLC-like遺伝子発現が関与する.過剰発現体による機能評価試験の結果,FLC-like遺伝子は休眠花芽において発芽抑制機能をもつことを示した.また,ヒストンH3のK4トリメチル化(H3K4me3)によるエピジェネティック制御がFLC-likeの発現制御に関与することも明らかにした.さらに,H3K4me3によるグローバルなエピジェネティック制御がリンゴの休眠制御に関わることを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
リンゴの休眠制御におけるエピジェネティック制御の関与に関して,当初の計画以上の進展がみられた.すなわち,先行研究で報告があるDAM遺伝子に加え,ABA生合成経路や細胞周期経路にもエピジェネティックな制御が関係することをChIP解析により明らかにできた.現在学術誌における論文公開を目指している.さらにエピジェネティック制御を司る上流因子の解明も進めている.
|
今後の研究の推進方策 |
サクラ属の休眠・低温要求性制御機構解明については,細胞組織レベルでの形態観察によりDAM遺伝子の休眠への直接的関与の証拠を明らかにする.また低温要求性・発芽早晩性に関わるQTL候補領域の絞り込みと候補遺伝子のリスト化を進める. リンゴの休眠・低温要求性制御機構については,エピジェネティック制御を司る上流因子の候補となる転写因子を複数同定しており,その機能解析を進める. 本研究の目標のひとつである,新規休眠打破剤の開発に向けて,日本でもっとも問題となっているニホンナシ発芽不良樹についての解析を進める.
|