本研究は、カキ品種間に特異な幅広い果実形状多様性に着眼し、その多様性形成過程をゲノム進化・集団進化・分子進化の観点から紐解くことを目的とした研究を展開した。これまでの実績として、六倍体である栽培ガキの参照ゲノム配列として、二倍体野生近縁種であるマメガキ(D. lotus)の全ゲノム配列を解読し、これを基として、カキ品種全体を網羅する集団構造解析・ゲノムワイドアソシエーション解析(GWAS解析)を実施するとともに、果実形状決定期において、その中心的な役割を果たす遺伝子ネットワークを明らかとした。 2021年度の研究成果としてカキ品種間において、カキ品種間における高度なゲノムワイドデータを採集し、集団遺伝学的手法に基づいた解析を行った。174のカキ品種群において、その集団構造はほぼクラスタ化しておらず、一部の完全甘柿品種群を除いてランダムな進化経路を辿っていること、また、品種間における果実形状の推移がゲノム構造に依存しないことを明らかにした。GWAS解析において、果実形状を反映する楕円フーリエ記述子の主成分値群に連関する2つの遺伝子座を同定した。この領域には細胞分裂・伸長に関わる重要遺伝子群や、これまでカキ品種群の形状に相関を見せていたサイトカイニン応答遺伝子関連の制御候補因子が含まれていた。さらに、既にカキ品種群において形状多様性と強い相関性を見せていたKNAT1やCKXなどと言った遺伝子群の発現に対してeGWAS解析を行った結果、有意な連関性を見せる遺伝子座が複数同定された。
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