研究課題
ウリ類炭疽病菌の6系統のいずれにおいてもキュウリへの侵入ステージにおいて高発現しているエフェクター様分泌タンパク質遺伝子群を、当該系統のキュウリ接種1日後のRNAシークエンスデータを利用して網羅的に選抜した。選抜したすべての候補遺伝子(合計33遺伝子)について、ウリ類炭疽病菌104-T系統を親株とした標的遺伝子破壊解析を実施した。その結果、33遺伝子のうち、4遺伝子の標的破壊株において、ウリ科作物であるキュウリおよびメロンへの病原性の低下が見出された。そのうちの1遺伝子は、すでに同定に成功していたECAP12遺伝子であった。一方、残り3遺伝子は新規の遺伝子であり、新たに同定したこの3種のエフェクター遺伝子をそれぞれEPC1、EPC2、EPC4と命名した。さらに、EPC1遺伝子とEPC2遺伝子の二重破壊株を作出して、キュウリおよびメロンへ接種した結果、単一遺伝子破壊株と比較して、二重破壊株では病原性の更なる低下が観察され、この結果より、EPC1、EPC2はウリ科作物への病原性に相加的に寄与していることが推察された。また、エフェクターECAP12とNbBiP5は、共免疫沈降解析によってその相互作用が検出された。続いて、その共局在性について調査した。具体的には、mCherryとNbBiP5の融合タンパク質と、GFPとECAP12の融合タンパク質をベンサミアナタバコにおいてアグロバクテリウムを用いて一過的に共発現させ、その細胞内局在性を調べた結果、両タンパク質は明確な共局在性を示した。
1: 当初の計画以上に進展している
ウリ類炭疽病菌の6系統のRNAシークエンス解析(キュウリ接種1日後)により、本菌の宿主侵入時に発現する重要エフェクター候補として、33遺伝子を選抜し、この候補遺伝子すべてに対して、網羅的に標的破壊解析をおこなった結果、4遺伝子の標的破壊株において、ウリ科作物への病原性の低下が見出された。そのうちの1遺伝子は、すでに同定に成功していたエフェクターECAP12遺伝子であった一方、残りの3遺伝子は新規のエフェクター遺伝子であり、それぞれEPC1、EPC2、EPC4と命名した。このように、本研究においては、本菌の宿主侵入時に発現し、宿主への病原性発現に必要な複数の重要エフェクターの発見に成功している。植物病糸状菌は多数のエフェクター様遺伝子を有しており、その機能重複性などから、欠失することにより病原性に影響がでるエフェクターを同定するのは難しく、実際、報告例も非常に限定的である。そのような状況下、EPC1、EPC2、EPC4の同定に成功した点は特筆すべき成果と評価できる。また、ECAP12に関しては、その標的であるNbBiP5との相互作用について、細胞内局在性の観点からも支持する結果を得ている。以上より、本研究は当初の計画以上に進展していると評価する。
新たに同定に成功したウリ科作物への病原性に関わる3種のエフェクター様遺伝子(EPC1、EPC2、EPC4)の機能解析を実施していく。具体的には、EPC1、EPC2、EPC4遺伝子の発現パターンを明らかにするとともに、EPC1、EPC2、EPC4がコードするタンパク質のウリ類炭疽病菌とウリ科作物の相互作用時における局在性も調査する。さらにEPC1、EPC2、EPC4遺伝子およびECAP12遺伝子について、多重破壊株を作出しその病原性を評価する。また、NbBiP5とECAP12は、共免疫沈降解析によってその相互作用が確認され、さらに両タンパク質を一過的に発現させた場合、ベンサミアナタバコにおいて共局在することを明らかにした。今後はまずECAP12を過剰発現させたベンサミアナタバコについて、植物免疫機構への影響を詳細に調査する(特にPAMP誘導免疫に焦点をあてる)。並行して、ECAP12を恒常的に発現させる形質転換シロイヌナズナを作出し、同様にPAMP誘導免疫を中心にその植物免疫機構への影響を調査し、ECAP12のエフェクター機能に迫る。また、シロイヌナズナおよびウリ科作物のNbBiP5ホモログとECAP12の相互作用の有無について、共免疫沈降解析により評価する。
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Scientific Reports
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Biochemical and Biophysical Research Communications
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10.1016/j.bbrc.2019.05.007