研究課題/領域番号 |
18H02209
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
竹内 香純 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (40370663)
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研究分担者 |
諸星 知広 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90361360)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植物保護細菌 / 二次代謝制御 / シグナル物質 / 抗菌性物質 / 調節型small RNA / 比較トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
植物の根圏に生息するシュードモナス属細菌Pseudomonas protegensは、多様な抗菌性二次代謝産物を産生し周囲の病原微生物を駆逐することから植物保護細菌とよばれる。抗菌性物質の合成酵素遺伝子の発現は、調節型small RNAを中心とした二次代謝制御系(Gac/Rsm)により制御されているが、研究代表者らはこれまで、一連の制御系が常に稼動するのではなく、周辺環境に応じてオン・オフが切り替わることを明らかにした。オンに関わる亢進シグナル物質として一次代謝産物、二次代謝産物のいずれもが含まれていることが示唆されている。 本年度は、昨年度活性を有することを明らかにした亢進シグナルA(一次代謝産物)を用い、植物保護細菌とともに病害土壌に処理し、植物保護効果を評価した。その結果、亢進シグナルAとの共存により植物保護細菌の保護効果が高まることが明らかとなった。亢進シグナルA単独処理では植物保護効果はみられないことから、当該物質が細菌の機能向上に寄与することが裏付けられた。 亢進シグナルBとして機能する二次代謝産物については、昨年度、合成酵素遺伝子の欠損変異株において調節型small RNAの発現量が低下することを確認したことから、本年度はその下流の遺伝子群の変動を網羅的に明らかにすべく遺伝子発現解析(RNA Seq)を行った。さらに昨年度シグナルBに対する反応性が異なる系統を得たことから、系統間の比較解析(比較トランスクリプトーム解析)を併せて遂行した。その結果、亢進シグナルBに反応する系統では、合成酵素遺伝子欠損変異株のRNA Seqのプロファイルにおいて、上述のGac/Rsmのシグナル伝達系の制御下にあるとされる遺伝子群の発現が一律、低下していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたシグナルAに関する植物保護能力検定試験、およびシグナルBに関するトランスクリプトーム解析のいずれも順調に進めることができた。シグナルAに関する関連遺伝子の欠損変異株を当初予定していたが、シグナルBの解析結果に大きな進展がみられたため、そちらにより注力することとした。シグナルBについて応答性の異なる系統を見出したことで、比較トランスクリプトーム解析を通じ有力なデータの取得が見込まれた。
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今後の研究の推進方策 |
シグナルBに関する比較トランスクリプトーム解析の結果を受け、各系統における発現量の詳細な比較を行うため、qRT-PCRを中心としたターゲット解析を行う。二次代謝産物であるシグナルBについて、これまでの合成酵素遺伝子の欠損変異株を中心とした解析に加え、外因性シグナルとしての機能を明らかにするための解析を行う。さらに、他の抗菌性二次代謝産物に同等の機能を有するかを明らかにするため、候補となる物質(CおよびD)についても合成酵素遺伝子の作出を行い解析を進める。
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