植物から精製したウイルス粒子由来のタバコモザイクウイルス (TMV) RNAに比して試験管内転写で合成したRNAは、低いPMTC形成効率を示す。TMV RNAの5'末端近傍領域はPMTC形成の核となるが、そこにはアデニンの6位アミノ基のメチル化コンセンサス配列が2個存在する。そこで、PMTC形成がアデニンのメチル化に依存する可能性について検討した。先ず、メチル化アデニン特異的抗体を用いてウイルス粒子由来TMV RNAの当該領域のメチル化の有無を調べたが、メチル化は検出されなかった。また、それらコンセンサス配列に変異を導入してもPMTC形成効率に大きな変化はなく、PMTC形成へのアデニンメチル化の関与は示唆されなかった。一方、5'末端に2個のG残基の挿入をもつ試験管内転写TMV RNAが、挿入をもたないRNAよりも高い効率でPMTCを形成することを見いだした。この系を用いて、130Kタンパク質のみをコードするトマトモザイクウイルス(ToMV; TMVで180Kタンパク質のみをコードするコンストラクトが構築できなかったため、以後の実験ではTMVに近縁のToMVを使用)のPMTC様複合体(core PMTC)を形成させ、RNAと結合していない180Kタンパク質を添加したところ、180Kタンパク質の一部は蔗糖密度勾配遠心でcore PMTCと同程度に沈降した。この画分を回収し、130Kタンパク質を免疫沈降すると、180Kタンパク質も共精製された。このことから、180Kタンパク質がcore PMTCに取り込まれたと推測された。180Kタンパク質の130Kタンパク質との共精製はヌクレアーゼ処理に抵抗性であった。このことから、180Kタンパク質はタンパク質間相互作用あるいはマイクロコッカルヌクレアーゼ耐性のRNAとの相互作用を介してcore PMTCに結合していると考えられた。
|