研究課題
核多角体病ウイルス(NPV)に感染した,昆虫細胞に誘導される全タンパク質合成停止のメカニズムを明らかにすることを目的として,NPV感染によって誘導されるカイコ(Bombyx mori)由来培養細胞におけるリボソームRNA(rRNA)の分解機構とその誘導機構,およびNPVによる回避機構を明らかにすることを計画している.今年度は,rRNAの分解機構とその誘導機構についての解析を行った.リボソーム分解経路の解析:リボソーム分解経路の解析を目的として,分解が行われる細胞内局在性を解析する計画であった.この計画を進めるため,GFPを融合させたリボソームタンパク質を発現するカイコ細胞を作出することを計画したが,候補となるリボソームタンパク質を絞り込むことができなかった.NPVのP143と相互作用するカイコ細胞因子の探索と同定:リボソーム分解の誘導機構解析を目的として,引き金となるウイルス因子,AcP143と相互作用するカイコ細胞因子の探索を行った.まず,AcP143の全長を用いた免疫沈降法を実施したが,候補となる細胞タンパク質を特定することはできなかった.AcP143は1221アミノ酸残基からなる高分子量のタンパク質であり,細胞内での発現量は極めて低かった.そこで,発現効率を上げるため,AcP143の機能ドメインの絞り込みを行った.その結果,325-599アミノ酸残基からなる領域でrRNA分解が誘導されることを明らかにした.この領域を用いて,相互作用する細胞因子の探索を進めている.
4: 遅れている
リボソーム分解経路の解析を目的として,rRNA分解が行われる細胞内局在性を解析する計画であった.この計画を進めるため,GFPを融合させたリボソームタンパク質を発現するカイコ細胞を作出する予定であったが,候補となるリボソームタンパク質を絞り込むことができなかった.したがって,この方法ではリボソーム分解経路の解析につながらず,rRNA分解に関与するエンドリボヌクレアーゼを予測することができなかった.そこで,カイコゲノムの遺伝子情報からrRNA分解に関わるエンドリボヌクレアーゼの探索を進めた.RNaseとして176遺伝子が特定され,そのうち6遺伝子がエンドリボヌクレアーゼであった.現在,6遺伝子の機能解析を進めている.リボソーム分解の誘導機構解析を目的として,引き金となるウイルス因子,AcP143と相互作用するカイコ細胞因子の探索を行った.まず,AcP143の全長を用いた免疫沈降法を実施したが,候補となる細胞タンパク質を特定することはできなかった.AcP143は1221アミノ酸残基からなる高分子量のタンパク質であり,細胞内での発現量は極めて低かった.そこで,発現効率を上げるため,AcP143の機能ドメインの絞り込みを行った.その結果,325-599アミノ酸残基からなる領域でrRNA分解が誘導されることを明らかにした.この領域をカイコ細胞で発現させて,相互作用する因子の特定を進めている.
遺伝情報から特定されたエンドリボヌクレアーゼをコードする6遺伝子について,クローニングならびにRNAi法を用いたノックダウン解析により機能解析を行い,rRNA分解に関わるエンドリボヌクレアーゼを特定する.AcP143の機能ドメイン(325-599アミノ酸残基)を用いて,免疫沈降法により相互作用する細胞因子の探索を進める.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Dev. Comp. Immunol.
巻: 84 ページ: 133-141
10.1016/j.dci.2018.02.009.
Virus Res
巻: 258 ページ: 28-38
10.1016/j.virusres.2018.09.014