研究課題
核多角体病ウイルス(NPV)に感染した,昆虫細胞に誘導される全タンパク質合成停止のメカニズムを明らかにすることを目的として,NPV感染によって誘導されるカイコ(Bombyx mori)由来培養細胞におけるリボソームRNA(rRNA)の分解機構について解析を行った.rRNA分解をもたらすリボソーム分解経路を明らかにすることを目的として,リボソーム分解が行われる細胞内局在を調査した.まず,GFPあるいはDsRedタグによって蛍光標識されたカイコリボソームタンパク質をカイコ細胞で発現させる系を構築した.キイロショウジョウバエで蛍光標識タンパク質が正常にリボソームに組み込まれることが報告されているリボソームタンパク質のカイコホモログ(BmRpS15,BmRpS18,BmRpL10,BmRpL11)をコードする遺伝子クローニングし,発現ベクターに導入した.N末端あるいはC末端側にGFPあるいはDsRedタグを付加してカイコ細胞で発現させた結果,N末端にEGFPを付加したBmRpS15とC末端にDsRedを付加したBmRpL11によって,主に細胞質に強い蛍光が観察された.つぎに,蛍光標識した両リボソームタンパク質を共発現させたカイコ細胞に,rRNA分解を誘導するAutographa californica NPV(AcMNPV)感染させ,経時的に顕微鏡観察を行った.その結果,感染後24時間において,蛍光の減少が認められた.一方,コントロールとして用いた,rRNA分解を誘導しないBombyx mori NPV(BmNPV)感染細胞および偽感染細胞においては蛍光の減少は認められなかった.したがって,AcMNPV感染によって,細胞質に存在するリボソームタンパク質あるいはリボソーム自体の分解が誘導されていることが示唆された.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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