研究課題/領域番号 |
18H02224
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40274344)
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研究分担者 |
今村 彰生 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00390708)
松山 周平 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (30570048)
名波 哲 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70326247)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 侵略的外来植物 / 無融合生殖 / 雑種 / タンポポ |
研究実績の概要 |
日本における雑種タンポポの形成・拡大過程を推定するために以下の研究を行った。(1)西日本における雑種タンポポ分布の10年間の変動:「タンポポ調査西日本」を西日本各地から市民調査によって採取されたセイヨウタンポポに見える個体の果実を大阪市立大学に送付してもらい、雑種判定(葉緑体DNA分析)と倍数性分析(フローサイトメータ)を進めた。ただし、新型コロナウィルス感染症拡大のため、「タンポポ調査西日本」の実施期間が1年延期されたため、サンプル送付の完了も1年延期された。また、マイクロサテライト(SSR)とGRAS-Di法によるクローン判定法を確立するための実験を行い、より信頼度の高い雑種判定方法を開発して、大阪周辺の雑種タンポポクローンの経時的変化について新しい方法で再解析する準備を整えた。 (2)雑種の形成地域と移動経路の推定:葉緑体DNAと核DNA(GRAS-Di法)のデータを解析し、三倍体雑種では複数地域で形成された異なるクローンが狭い地域に分散し、四倍体雑種では単一の地域で形成された同じクローンが広域に分散したと推定された。(3)北海道における雑種タンポポの分布状況:北海道東部からセイヨウタンポポに見える個体について詳細な遺伝子解析を行ったが雑種と確定できる証拠は得られなかった。(4)北海道におけるセイヨウタンポポのクローン分布:SSRを使ったセイヨウタンポポのクローン解析を継続し、広域に分布するクローンが存在することがわかった。 (5)栽培実験による生態特性解析:大阪で採取した雑種タンポポと北海道のセイヨウタンポポで広域に分布するクローンの果実を用いて、養分と光の条件を変えた栽培実験を開始した。北海道のセイヨウタンポポについての予備実験で、クローンによって光条件への応答に違いがあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉緑体DNAの配列、各DNAのSSR変異、ゲノムワイドな遺伝的変異の取得(GRAS-Di法)という3つの異なる遺伝子解析を使うことで、西日本の雑種クローンの分布状況をある程度あきらかにすることができた。西日本全域での経時的変化に必要な「タンポポ調査西日本」が1年延期されたため、サンプル採取完了も来年度に延びたが、すでに一部の地域のサンプルは集まっており、来年度中には分析を完了できる。北海道の雑種タンポポと思われたサンプルが雑種であるという確実な証拠は得られなかった。そのため、北海道の調査はセイヨウタンポポを対象として行うこととし、西日本の雑種タンポポと北海道のセイヨウタンポポのクローン多様性を比較することに目的を修正した。すでにセイヨウタンポポ(北海道)と雑種タンポポ(大阪)のクローンを使った栽培実験を開始しており、来年度中には結果がられるため、雑種とセイヨウの環境への対応の違いを明らかにできる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は最終年度にあたるため、当初の計画通り以下の4項目に関する調査を完了させる。(1)西日本における雑種タンポポ分布の10年間の変動、(2)雑種の形成地域と移動経路の推定、(3)北海道における雑種タンポポの分布状況の把握と雑種形成初期過程の推定、(4)栽培実験による雑種クローンの環境適応の検証。特に、(1)については、当初予定から1年延期された「タンポポ調査西日本2020」と協働で行う西日本広域の雑種分布調査を完成させる。また、当初の予想に反して、北海道で雑種タンポポを見出すことができなかったため、北海道ではセイヨウタンポポのクローン解析と栽培実験によるクローン間の生態特性の違いについて調査し、西日本の雑種タンポポと比較することとする。最終的に、すべての結果を総合して雑種タンポポの形成・拡大過程を推定する。
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