研究課題/領域番号 |
18H02230
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
|
研究分担者 |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
渡辺 洋一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (30763651)
植木 岳雪 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (40371025)
齊藤 毅 名城大学, 理工学部, 准教授 (50242813)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 気候変動 / 第四紀 / 植生変化 / 種分化 / 植物化石 |
研究実績の概要 |
新潟県南部の魚沼層群の約240~70万年前の大型植物化石群と花粉化石のこれまで採取した試料を整理し,日本海側の前期更新世植物相変遷と古環境変遷を明らかにした.現地での火山灰層序の補足調査に基づいて試料採取層準の編年・対比を行い,補足試料について堆積物の水洗篩分・分別・同定による大型植物化石分析と花粉分析を行った.現生植物の分布気温範囲のデータを適用して,大型植物化石群から前期更新世の古気温変化を推定した結果,約4万年周期の気候変動だけではなく長周期の気候状態の変化が明らかになった.すなわち,約260~210万年前と約150~100万年前の間氷期が比較的温暖で,約210~150万年前が間氷期,氷期とも比較的寒冷であることが明らかになった.越後山脈より東側に分布する山都層群の現地調査を行った結果,大型植物化石の産出露頭が極めて少なく植物化石層序の構築が困難であることが明らかになり,関東地方南部の上総層群の植物化石群資料を太平洋側の植物化石相を解明するための材料として,分析と層序の検討を始めた.スゲ属アゼスゲ節の現生および化石痩果形態の検討を始め,現生標本を収集するとともに,日本海側に偏って分布する種の化石の同定が可能かどうか,検討を行った.植物化石の炭素・酸素安定同位体比に基づく積雪気候および乾燥気候復元のための基礎調査として,東北地方南部の完新世の堆積物中の葉化石の安定同位体分析を行った.太平洋側と日本海側の気候の違いが葉化石にもとづく古気温推定に大きな影響を及ぼすことが,植物分布資料の分析から明らかになり,その成果を論文発表した.多雪地環境における群集レベルでの適応的な進化の歴史を明らかにするため,ユズリハ属のほかイヌガヤについても遺伝子解析を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
魚沼層群の植物化石群資料の整理が進み,前期更新世全体を通した古環境変遷が詳細に明らかになった.一方,山都層群の植物化石調査を進めた結果,魚沼層群と比較するだけ十分な成果を得るのが困難であることが明らかになったため,これまで資料の蓄積のある上総層群の資料を併せて検討を進めることとした.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の調査の結果,露頭状況が悪化し効率よくデータが得られなかった山都層群の大型植物化石資料については,これまでの資料の蓄積がある関東地方南部や近畿地方中部の植物化石資料を用いることで補完を行う.安定同位体に基づく多雪環境の指標と考えていたスゲ属はフェノロジーの検討から材料として向かないことがわったが,スゲ属アゼスゲ節痩果の種レベルの形態学的検討を進めており,その化石を用いて日本海側と太平洋側のフロラの分化プロセスの検討を進める予定である.
|