研究課題/領域番号 |
18H02235
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 准教授 (80378918)
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研究分担者 |
松岡 憲知 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10209512)
逢坂 興宏 静岡大学, 農学部, 准教授 (20252166)
早川 裕弌 東京大学, 空間情報科学研究センター, 准教授 (70549443)
中谷 加奈 京都大学, 農学研究科, 助教 (80613801)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 土石流 / 土砂生産 / 土砂貯留 / 現地観測 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
地質,地形,土石流の規模,頻度が異なる3つの土石流発生渓流(南アルプス大谷崩,富士山大沢崩,スイスTaschgufer)において,山腹からの土砂生産状況の観測,土石流の材料となる土砂貯留量の観測,土石流の発生・流下状況の観測を行い,土石流の中長期的な予測に用いる「土砂貯留マップ」の作成に必要な調査手法の検討と,基礎データの収集を開始した。また,将来的に土石流シミュレーションを行うために必要な入力データの収集を行った。 現地における具体的な観測項目として,まず大谷崩においては,UAV(無人航空機)を用いた地形計測を,山腹からの土砂生産後,さらには土石流の発生後に行い,土石流の材料となる不安定土砂の蓄積状況の経時変化を把握することができた。あわせて,タイムラプスカメラ等を用いた土石流の発生・流下状況の観測を行い,土石流の特性に関するデータの蓄積を行った。 富士山大沢崩においては有人機等による地形計測成果を解析することで,不安定土砂の貯留状況の変化を調べた。あわせて航空レーザー計測の成果をもとに,山腹における土砂生産の状況や,土砂の流出状況を調べ,土砂生産や土砂流出と不安定土砂の貯留状況の関係性を検討した。スイスTaschguferにおいては,岩盤の温度や水分量の変化を観測し,岩盤の風化に伴う土砂生産プロセスに関するデータを蓄積した。また,土砂生産~土砂貯留~土石流の発生・流下に至る一連のプロセスを把握するため,タイムラプスカメラによる観測体制を整えた。 これら3つの土石流発生渓流の現地観測と並行して,土石流シミュレーションを行うために必要な入力データ(地形,水文特性等)の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南アルプス大谷崩,富士山大沢崩,スイスTaschguferの3つの調査地において,当初の計画にあった現地調査を滞りなく行うことができた。観測体制の構築が完了したほか,一部の観測においてはすでに貴重なデータの蓄積がみられつつある。特にUAV撮影や有人機航空レーザー測量によられた地形情報の解析により,これまで未解明の部分が多かった土石流材料の貯留状況の実態把握を行うことができた。これらの成果については国内外において研究発表を行うことで,成果を公表した。研究者間での協力も役割分担のもと円滑に行われており,土砂生産,土砂の貯留,土石流の発生・流下,シミュレーション,それぞれの項目において,研究を進展させることができた。国内の調査地の管理者である国土交通省や,スイスの調査地で共同研究を行っているジュネーブ大学からも,円滑な研究の遂行に必要なサポートを受けることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに築いた現地観測体制を活用し,土石流の材料となる土砂の生産過程,流域内での土砂の貯留状況の経時変化,そして土石流の発生・流下状況についてのデータを蓄積していく。これにより本研究の達成に必要な「土砂貯留マップ」の作成に必要な知見を得る。土石流の発生域での観測であり,観測機器が土砂移動に損傷することも考えられるため,定期的に現地へ行き,十分なメンテナンスを実施する。2019年度からは,不安定土砂の分布状況の将来予測を行う手法についての検討を開始するほか,土石流の発生・流下に関するシミュレーション手法に関する具体的な検討も行う。 これまで同様に,研究代表者・分担者間での協力・分業体制のもとで研究をすすめる。観測対象地の管理をしている事業者や,国内外の関連分野の研究者(スイスジュネーブ大学等)との連携のもと,研究を円滑に進行させる。
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