研究課題/領域番号 |
18H02238
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
伊藤 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70456820)
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研究分担者 |
平田 竜一 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (10414385)
平野 高司 北海道大学, 農学研究院, 教授 (20208838)
常田 岳志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主任研究員 (20585856)
坂部 綾香 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員 (40757936)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メタン / 東南アジア / ばらつき / 熱帯泥炭湿地 |
研究実績の概要 |
インドネシア・中カリマンタン州のサイトにおいては、フラックス観測タワーを用いた生態系スケールのメタンフラックス観測を継続して行っており、気象の年々変動を受けてどのように変動するかについてのデータが蓄積されつつある。新型コロナウィルスの拡大により現地でのデータ回収等が行えなくなったため、カウンターパートとオンライン会議システムを用いることで観測データの回収を継続している。 入荷が遅れていたレーザーメタン計を用いた現地でのチャンバー法によるメタンフラックス観測の準備を整えた。しかしながら新型コロナウィルスの感染症の拡大により海外渡航し現地調査できない状況となっている。そのため過去に採取した様々な土地利用条件下の熱帯泥炭地の地下水中溶存有機態炭素の量と質の分析及びデータ解析を進めた。インドネシア・スマトラ島のリアウ州(未火災の泥炭地二次林・複数回の火災を受けた焼け跡や後に小規模オイルパーム農園化した泥炭地・アカシアプランテーションから流出する排水路の水・天然泥炭湿地林など)とカリマンタン島の中カリマンタン州(未排水の泥炭湿地然林・排水泥炭林・複数回火災を受けた焼け跡)を含む約250個の試料について、燃焼式吸光光度法によるDOC濃度測定、EEMSによるDOMの蛍光特性分析を行った。クラスター解析及び主成分分析を行ったところ、土地利用ごとに個別のクラスターとして分類され、現在、既に得られている水質データと合わせてデータを検討している。これまでの結果から、火災を受けた泥炭地下水のDOCの性質は未火災の泥炭地のものとは異なることなどが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チャンバー法による現地観測準備は整っているが、新型コロナウィルスの影響により渡航できない状況であった。そのためインドネシア中央カリマンタン州の観測サイトでは現地カウンターパートとオンラインミーティングシステムを用いてフィールドに設置した現地観測測器の取得データを回収してもらい、クラウドシステムを用いてデータ転送を依頼することとした。これにより、現地観測ができない期間も一部のデータに関しては継続してデータを得ることができた。今後もインドネシアなどで感染状況が改善しない場合は、さらに詳細なオンライン打合せを行い、現地でのデータ収集や観測測器の管理についての情報共有・キャパシティビルディングを行う。現地訪問による感染リスクを低減しつつ正確な観測データを得られるようにする観測システムを構築しつつある。 現地で予定していた試料採取や観測が新型コロナウィルスの影響により、予定通りには進んでいない状況である。一方で、これまでに採取した試料を用いて実験室での培養実験などを行い、温室効果ガス生成機構の解明に向けて研究を進めている。pHの違いが温室効果ガス発生に関わる微生物活性にどのように影響し、結果としてメタンなどの温室効果ガスの排出量がどのように変化するかについて実験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現地でのレーザーメタン計を使用したチャンバー法による地表面からのメタンフラックス観測については、機器の調整を進め現地観測が可能になればすぐに始められる状況である。新型コロナウィルスの影響が収束し、現地調査ができるようになり次第速やかに進める。これにより、これまで難しかった泥炭湿地林林床からのメタン放出の空間的ばらつきの把握と日変化を明らかにする。 また、現地の泥炭試料を用いた培養実験によるメタン生成ポテンシャルの測定については、現地での土壌採取が難しいことから多地点間の比較ではなく、酸性泥炭土壌の中和程度の違いによる比較に焦点を当てる。今後は、実験終了後に土壌から溶出した溶液の溶存有機態炭素(DOC)濃度等についても分析を進める予定であり、pHを変化させることでどのように炭素循環に関わる微生物の活動が変化することを明らかにできると見込まれる。 同時に、培養の際に発生するメタンの炭素安定同位体比の測定と解析を行うことで、メタン生成の基質の違いについても検討する。この基質の違いが各地点間のメタン生成ポテンシャルの違いと関係するかどうかについても検討する。 一方これまで継続しているタワーを利用したメタンフラックスの観測については現地カウンターパートの協力によるデータ回収を継続することで、長期間の気象条件の変動に対する生態系スケールのメタンフラックスの変動応答について明らかにする。
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