研究課題/領域番号 |
18H02239
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小杉 緑子 京都大学, 農学研究科, 教授 (90293919)
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研究分担者 |
中路 達郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (40391130)
伊藤 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70456820)
野口 正二 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90343780)
高梨 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90423011)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東南アジア / 水循環機構 / 植物水分生理 / 生態系フラックス / 低地フタバガキ林 |
研究実績の概要 |
本研究は、熱帯雨林の水循環機構と植生のレジリエンスとの相互作用を解明することを目的とする。東南アジア熱帯雨林(Pasoh森林保護区・半島マレーシア低地フタバガキ林)において、いつ・どこに・どれだけ「利用できる水」が存在するか(=水循環機構)、水ストレスに対する樹木の生存戦略(=植物水分生理)、ガス交換機能の安定性の中に隠された樹木の反応が示す安定性を支えるメカニズムと限界(=生態系フラックス)、の3つの視点から現地観測を行い、これらの結果をアマゾン熱帯雨林などの他所のデータとも併せて統合的に解析することで、降水量変動に対して熱帯雨林がどのように反応しその機能を保ちうるか(=熱帯雨林のレジリエンス)を評価するものである。 2020年2月からのコロナ禍により2020年9月に予定していた渡航が2022年9月までずれ込んだが、この間、課題Aについて、土壌各深度における体積含水率・圧力水頭、降水量の連続観測に加え、定期的な河川水・土壌水・降水のサンプリングを行った。水サンプルは2022年9月に日本に持ち帰った。課題Bについては、2019年度までに取得したデータの解析を行い、樹木個葉のガス交換と気孔の不均一開閉の実態を明らかにした。課題Cについて、タワー上生態系フラックス(運動量・顕熱・潜熱・蒸発散・CO2フラックス)、分光反射、放射各項、各高度での風速・気温・湿度・光量、CO2濃度、地温等について、観測を継続し、長期連続データの取得を行った。渡航ができなかった期間の後半において、生態系フラックスおよび各種気象要素の観測の一部が測器のトラブルにより停止していたが、2022年9月渡航時にすべて再開させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年2月からのコロナ禍により2020年9月に予定していた渡航が2022年9月までずれ込んだ。この間、マレーシア側研究協力者の協力により、連続測定およびサンプリングを継続したが、不具合の出た測器は渡航時に測器を交換しなければ解消しないため、研究に遅れが生じた。2022年9月渡航時に、測器のトラブルにより停止していた生態系フラックスおよび各種気象要素の観測体制をすべて再開させ、水サンプルを日本に持ち帰ることができたが、研究に若干の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、課題Aについて、降水・土壌水・河川水の酸素・水素安定同位体比および各種水質分析を行い、同サイトにおける水文過程の特性を明らかにする。 課題Bについて、得られたデータの解析を行い、植物体内の水貯留場所を同定する。 課題Cについて、タワー上生態系フラックス(運動量・顕熱・潜熱・蒸発散・CO2フラックス)、分光反射、降水量、放射各項、各高度での風速・気温・湿度・光量、CO2濃度、土壌各深度における体積含水率・地温・圧力水頭等についての長期連続データに基づくデータベースを作成する。水文データ・植物生理データ、生態系フラックスデータを用いた統合解析を行い、最終的に樹木の水利用深度と生態系フラックス安定性の関係について明らかにする。
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