研究課題/領域番号 |
18H02243
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
大橋 瑞江 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (30453153)
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研究分担者 |
福澤 加里部 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10456824)
中路 達郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (40391130)
牧田 直樹 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (40723086)
平野 恭弘 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60353827)
野口 享太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353802)
大澤 晃 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (90288647)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 樹木根 / 森林 / ストレス処理 / 枯死過程 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
樹木の細根は、葉のように短いサイクルで発生と枯死を繰り返すとされているが、このライフサイクルにおいて、最も不明瞭な部分が衰退から枯死への過程である。そこで本研究では、細根の動きを土壌中でモニタリングしながら枯死を誘導することで、細根の枯死過程を解明することを目的とした。さらに地上部のフェノロジーや土壌環境を同時に計測することで、細根の枯死を支配する要因を特定し、枯死根の定量評価を試みる。そのために次の4つの実験に着手した。 ① 枯死に伴う細根の形質の変化は何か?② 細根の枯死はどう定義されるか?③ 細根の枯死はいつ、どのくらい発生するか?④ 細根の枯死を引き起こす要因は何か? 実験①と②では、アクリルポットを用いたストレス実験によって細根の枯死を誘導し、形態や生理状態の変化を求める。ストレスとしては、乾燥処理、踏圧処理を検討する。本年度はポットの設置準備とストレス処理の開始を行った。また枯死判定の予備実験を実施した。 実験③と④では、フィールド実験を通して枯死の発生パターンを生態系レベルで評価する。また、枯死の制御要因として土壌物理環境、地上部フェノロジーの影響を調べる。本年度はフィールド実験としてスキャナを使った細根動態をモニタリングする準備を行った。そのために必要な物品の手配や試験地の選定、実験計画の立案、マニュアル開発と測定準備などを主に行った。また、スキャナ法で枯死根をモニタリングするための方法論や枯死根採取のための方法論についての研究成果を公表した。スキャナ法についてはトレーニングコースを開催し、方法の統一化を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は順調であると判断される。各テーマの進捗状況は下記のとおりである。 実験①・② カラマツの苗木を用いたポット実験の準備を行った。実験は苫小牧演習林で行うこと年、苗木やポットなどの資材の購入と植栽を実施した。ポットは根系の変化を撮影できるように透明のアクリルで作成し、スキャナ面と同等のサイズとした。処理区のポットでは土壌を圧縮し、通気環境を悪化させた。 また、森林総合研究所の東北支所において細根採取を行い、枯死判定実験を行った。その結果、従来の判定法である見た目評価には大きなばらつきがあり、今後はより客観的な指標を模索する必要性が指摘された。 実験③・④ 国内のカラマツ人工林とヒノキ人工林において土壌中の細根の挙動をするためのスキャナボックスを埋設した。本年度はそのために、北海道、盛岡、長野、名古屋などの候補試験地を訪問した。この際、スキャナボックスのデザイン設計、埋設手順書を作成した。さらにミーティングを通して、対象樹種、処理の方法、繰り返し設定、測定項目、作業分担などを話し合い、実験計画の詳細について決定した。また、取得するデータについて、スキャナ画像の取得頻度、根系のサンプリング、化学分析、土壌環境の計測、地上部モニタリング項目などを打ち合わせし、それらのデータの取得方法を話し合った。各測定項目について、測器のメンテや新規購入などを行った。スキャナ法や枯死根採取法について、得られた成果を根研究会、森林学会、生態学会などで発表した。さらに画像解析手法を基準化するためにトレーニングコースを生態学会において約5日間に渡り、開催した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として以下を予定している。 実験①・② アクリルポットを用いたストレス実験については、昨年度から行っている踏圧ストレスを与えた苗木の育成を引き続き行う。さらに、踏圧ストレスを受けた根系と受けていない根系枯死過程を画像取得によりモニタリングし、形態や色情報を用いて枯死根の形質変化を調べる。 枯死判定実験については、従来、行われてきた枯死基準に基づく枯死根の判定の個人差と、枯死根の化学性、物理性の評価を再度行う。昨年の予備実験より、枯死根判定には大きな個人差が生じていることが判明したことから、今年は地上部切断により人為的に作成した枯死根の化学分析、形態分析を行い、枯死根の定義づけに結び付けられるようにする。 実験③・④ フィールドでの枯死根発生モニタリングについては、昨年、国内のカラマツと ヒノキ人工林において埋設したスキャナボックスを用いて、土壌中の細根の挙動のモニタリングを開始する。モニタリングは月1度の頻度を予定している。本年度はスキャナから枯死根を抽出するための基準作りや、枯死根の発生時期の評価方法を検討する。また、細根の枯死根発生要因などを検討するために、土壌物理環境、地上部フェノロジーのデータを同時に取得できるように準備する。物理環境としては、地温と土壌水分、フェノロジーデータとしては肥大成長と落葉量を検討する。さらにガラスビーズを用いて枯死根を直接取得する手法を検討し、根の枯死過程を評価する方法論の開発を引き続き、実施する予定としている。
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