| 研究実績の概要 |
ユーカリ（Eucalyptus camaldulensis）は、酸性土壌で問題となるアルミニウム過剰害に強い耐性を示す。我々は、ユーカリのアルミニウム耐性機構として、根に侵入したアルミニウムを加水分解性タンニン（以下、タンニン）が無毒化するという新しい機構を提唱している。本研究では、この新機構の全体像を理解することを目標とする。
令和3年度は、新規タンニン二量体をユーカリから単離して質量分析法やNMR分光法等により構造決定し、ユーカルパニンD2（Eucarpanin D2）と命名した。ユーカルパニンD2は、エノテインB（oenothein B）と同等の高いアルミニウム無毒化能を示した。また、液体クロマトグラフィー質量分析法（UPLC-Q-TOF-MS）によって、新たに1,2,6-トリガロイルグルコース（1,2,6-trigalloylglucose）、1,2,3,6-テトラガロイルグルコース（1,2,3,6-tetaragalloylglucose）、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコース（1,2,3,4,6-pentagalloylglucose）、テリマグランジンII（tellimagrandin II）、カジュアリクチン（casuarictin）がユーカリに含まれていることを明らかにした。ユーカリが含むタンニンの中では、含有量が多くアルミニウム無害化能も高いエノテインBが主要なアルミニウム無毒化タンニンであると考えられた。
アンチセンス法によってタンニン生合成遺伝子の発現を抑制した遺伝子組換えユーカリを分析し、タンニン量が少ない系統が複数得られていることを確認した。タンニン低含有の組換え体1系統のアルミニウム耐性を評価したところ、通常のユーカリと比べてアルミニウム耐性が低かった。タンニンがユーカリの高アルミニウム耐性を担っていることを示すには、さらに複数のタンニン低含有系統でアルミニウム耐性を調べる必要がある。
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