研究課題/領域番号 |
18H02248
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
内山 憲太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40501937)
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研究分担者 |
韓 慶民 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40391180)
楠本 倫久 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80537168)
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
金谷 整一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90353648)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生体防御物質 / カロテノイド / テルペノイド / ゲノムワイドDNAマーカー / 環境適応 |
研究実績の概要 |
全国のスギ天然林由来の挿し木苗が集植されている茨城県千代田苗畑において、生体防御物質の測定を行った。スギ天然林の4つの遺伝グループが含まれる6集団(鯵ヶ沢(日本海側北部)、山之内、安蔵寺(日本海側南部)、河津、新宮(太平洋側)、屋久島)の計56クローンを解析対象とした。 テルペノイド測定用のサンプルを8月に採取し、ヘキサンを溶媒としたメスアップ法によりテルペノイドの抽出を行い、ガスクロマトグラフィーによりジテルペン類の分析を行った。その結果、日本海側系統の北部ならびに屋久島においてジテルペンの量と種類において特徴的な違いが認められた。また、未同定の成分も検出され、スギ針葉内には地域により成分の種類ならびに量に地理的変異があることが示された。 また、カロテノイドの測定では、光ストレスの程度の把握が必要となるため、まず遺伝グループを代表する3集団に対して、8月と11月に光合成速度の測定を行った。その結果、太平洋側系統である新宮集団においてのみ、11月まで光合成速度が低下しないことが明らかとなった。このことは、試験地のある太平洋側環境下では、太平洋側系統の個体のみ遅くまで光合成を行っていることを示しており、光合成能力に関して、環境への適応が起こっていることが示唆された。また、カロテノイド測定用に夏季、秋季、冬季の3回にわたり針葉を採取し、液体クロマトグラフィー分析に供試した。 上記防御物質の測定対象個体に対し制限酵素断片配列の網羅的解析(ddRAD)を用い、ゲノムワイドなDNA多型情報を取得した。その結果、5000座を超える遺伝子座のDNA変異を特定した。また、他種において上記成分の合成に関わると予想される候補遺伝子のスギの相同遺伝子を特定し、61遺伝子座のDNA解析用のプライマーを設計した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本年度は宮城県の産地試験地を分析対象としていたが、年度初めに宮城県試験地で行った会議において、テルペノイド、カロテノイドともに採用する分析手法が安定的であるかをまず念入りに確認した方がよいという方針となり、予定を変更し、初年度は最も近距離でサンプルの採取が容易な茨城県千代田苗畑にて分析を行った。千代田苗畑での同一クローン反復に対する複数回の抽出および分析を通して、両物質ともに環境の影響なく安定的に分析できていることが確認できた。測定試験地の順番変更があったが、異なる遺伝クラスターに属する複数の集団の個体を対象に、テルペノイド、カロテノイドの分析を行うという予定は全て遂行できた。宮城県試験地は今回確立した手法を用いて次年度に分析を行う予定である。また、DNA解析においても、予定通りddRAD手法を用いて5000座を超えるゲノムワイドなDNA多型情報を取得した。また、他種において報告のあった上記物質の合成に関わる遺伝子のスギにおける相同遺伝子を特定し、61遺伝子座のプライマーも設計した。 以上より、分析対象試験地の変更はあったが、計画していた分析は全て予定通り遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
H31年度に茨城県千代田苗畑において測定したものと同じクローンセットを分析対象とする。テルペノイドの分析では、千代田苗畑でのサンプル採取と同時期の初夏に当年枝から針葉サンプルを採取し、ガスクロマトグラフィー分析によりセスキテルペン類およびジテルペン類の定性・定量分析を行う。カロテノイド分析では、高速液体クロマトグラフィーを用いてクロロフィル量、キサントフィルサイクル色素量およびロドキサンチン量を測定する。また、同時にPAM蛍光法を用いてサンプル採取時の光合成速度を測定する。 DNA解析では、H31年度に測定した成分と、ゲノムワイドデータとの間のゲノムワイド関連解析を行う。また、設計した成分合成関連候補遺伝子のプライマーを用いて、解析対象個体ならびに全国のスギ天然林の個体を対象にDNA多型解析を行う。 また、スギの分布適域モデルの構築を行い、今回解析対象とした産地試験地の環境値の抽出を行う。
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