研究課題/領域番号 |
18H02251
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
船田 良 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)
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研究分担者 |
梶田 真也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40323753)
半 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40627709)
堀川 祥生 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任准教授 (90637711)
渡邊 宇外 千葉工業大学, 先進工学部, 准教授 (70337707)
山岸 祐介 北海道大学, 農学研究院, 助教 (80770247)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 木質バイオマス / 細胞壁 / 管状要素 / セルロースミクロフィブリル / 培養細胞 / 生体イメージング / リグニン / 木部細胞分化 |
研究実績の概要 |
再生可能な資源・エネルギーである植物バイオマスの有効利用は、循環型社会を構築し、SDGsの達成のために重要である。植物バイオマスの大部分は、再生可能な樹木が生産する木材など木質バイオマスである。したがって、植物バイオマスの高度有効利用のためには、木材の材質特性を制御する機構、特に細胞壁階層構造の形成機構など樹木の二次木部細胞の分化過程を解明することが不可欠である。そこで本研究課題では、細胞全体に堆積する厚い二次壁と有縁壁孔やらせん肥厚など複雑な修飾構造を有し、仮道管や道管要素などに形態が類似した二次木部様細胞を樹木の培養細胞から直接高頻度で誘導する新規モデル系を確立し、セルロースミクロフィブリルの堆積やリグニンの沈着機構制御などを明らかにすることを目的とした。カルスから管状要素への誘導率を向上させるため、培地の植物ホルモン条件を検討し、針葉樹のトドマツの培養細胞からオーキシンであるNAAとブラシノステロイドの両者を組み合わせることにより、壁孔様構造を有する管状要素を誘導することが出来た。また、広葉樹のトチノキの培養細胞からオーキシンである2,4-Dとブラシノステロイドの両者を組み合わせることにより、厚い二次壁とらせん肥厚を有する管状要素を誘導することが出来た。植物ホルモン条件の違いにより、管状要素への誘導率が異なることから、細胞分化には植物ホルモンが重要な役割を担っているといえる。さらに、道管要素と同様なせん孔を形成する管状要素も認められ、トチノキの培養細胞は二次木部細胞の細胞壁形成機構を解析する上で優れたモデル系であるといえる。一方、GFP融合タンパク質を発現させて、微小管付随タンパク質の挙動を連続的に解析したところ、交雑ポプラの管状要素の分化に伴い、微小管の局在が変化したことから、微小管が複雑な細胞壁階層構造のパターン形成を制御していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主目的は、樹木の培養細胞から、厚い二次壁や有縁壁孔など複雑な構造を有する二次木部様細胞を直接誘導する新規モデル系を確立し、セルロースミクロフィブリルの堆積やリグニンの沈着など細胞壁の階層構造を解析することである。さらに、セルロース合成関連遺伝子の発現パターンを解析し、細胞壁形成機構を明らかにする。現在までの研究により、交雑ポプラやトチノキなど広葉樹、トドマツなど針葉樹の培養細胞から、細胞全体における厚い二次壁の堆積と有縁壁孔、らせん肥厚、せん孔など複雑な修飾構造を形成する管状要素を安定的に誘導することに成功している。特に、トチノキにおいては、道管要素と構造が類似したせん孔の形成を誘導することが出来、複雑な構造を有する二次木部細胞の分化機構を解明する上での良い新規モデルになるといえる。また、オーキシンやブラシノステロイドなど植物ホルモンの種類や濃度を検討し、管状要素の形態やせん孔のサイズとの関連性を明らかにした。さらに、共焦点レーザ走査顕微鏡とスペクトル分析を組み合わせた生体イメージング解析法を検討し、管状要素へ分化中の培養細胞内の微小管の配向や局在の動的変化とセルロースミクロフィブリルの配向や局在との関連性に関する知見も得られている。これまでに得られた成果の一部は国内や国際学会で多く発表し、国際誌に論文として公表または投稿中であることから、順調に研究が進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
樹木の培養細胞から、複雑な形態や細胞壁構造を有する二次木部様細胞を高頻度で直接誘導する条件をさらに検討する。特に、トチノキにおける二次木部様細胞の壁孔やせん孔のサイズや細胞壁微細構造を高分解能電子顕微鏡や共焦点レーザ走査顕微鏡を駆使して解析し、細胞形態を制御する要因を特定する。さらに、分子生物学や細胞生物学的な知見が蓄積されている交雑ポプラにおいて、厚い二次壁や有縁壁孔だけでなく、発達したせん孔を形成する条件を確立する。また、培養細胞から分化中の細胞における細胞骨格の立体配置を解析し、セルロースミクロフィブリルの配向や局在の制御機構を明確にする。一方、管状要素に沈着するリグニンの局在は、細胞壁の階層構造やセルロースミクロフィブリルの空間的な配置との関連性を理解する上で重要であるため、各種顕微鏡やプローブを駆使した生体イメージング技術を確立し、リグニンの細胞壁中での立体的な制御機構を明らかにする。また、培養細胞から二次木部様細胞へ誘導過程に特異的に発現するセルロース合成関連遺伝子の解析を進める。以上の研究結果から、樹木細胞壁の階層構造のモデル化を行う。得られる成果は、国内や国際学会等で発表するとともに、論文として広く公表する。
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