研究課題
再生可能な資源・エネルギーである植物バイオマスの高度有効利用は、循環型社会の構築において重要である。また、SDGsの達成、パリ協定の遵守、バイオエコノミーの推進などにも貢献する。植物バイオマスの高度有効利用のためには、樹木が生産する木材など木質バイオマスの材質特性の理解、特に材質を制御する細胞壁階層構造の形成過程など樹木の二次木部細胞の分化機構を十分理解するすることが不可欠である。本研究課題では、仮道管や道管要素などに形態や構造が類似した二次木部様細胞を樹木の培養細胞から直接高頻度で誘導する新規モデル系を確立し、セルロースミクロフィブリルやリグニンの堆積・沈着機構制御を明らかにすることを目的とした。ポプラのカルスから管状要素への誘導率の向上や細胞壁構造の制御のため、培地の植物ホルモン条件を検討し、オーキシン、ブラシノステロイド、ジベレリンの複合影響により誘導される管状要素の形態が変化した。一方、針葉樹のトドマツの培養細胞においては、オーキシンであるNAAの添加が管状要素の誘導に有効であった。また、広葉樹のトチノキにおいても、オーキシンである2,4-Dとブラシノステロイドを組み合わせることにより、培養細胞かららせん肥厚を有する管状要素を誘導することが出来た。したがって、樹木の培養細胞から管状要素を直接誘導し、形態や構造を制御する際の植物ホルモンの有効性が明らかになった。また、トチノキの培養細胞は、らせん肥厚やせん孔など複雑な細胞壁構造を有する二次木部細胞様細胞を直接誘導出来ることから、細胞壁階層構造の制御機構を解析する上で優れたモデル系であるといえる。一方、ポプラの培養細胞にGFP融合タンパク質を発現させて微小管の挙動を連続的に解析したところ、管状要素の分化に伴い微小管の配向・局在が大きく変化したことから、微小管が複雑な細胞壁階層構造のパターン形成を制御していると考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 10 ページ: -
10.1038/s41598-020-70356-9
Planta
巻: 251 ページ: -
10.1007/s00425-020-03396-0
http://web.tuat.ac.jp/~keisei/