研究課題/領域番号 |
18H02255
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅澤 俊明 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80151926)
|
研究分担者 |
飛松 裕基 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (20734221)
鈴木 史朗 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (70437268)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | リグナン / 合成生物学 / ポドフィロトキシン / 抗腫瘍性 / 生合成 |
研究実績の概要 |
ポドフィロトキシンは、抗腫瘍性リグナンであり、抗がん薬の生産原料として用いられている重要化合物である。抗がん薬生産用のポドフィロトキシンは、天然産ヒマラヤハッカクレン(メギ科)から抽出されているが、その生物工学的生産が希求されている。近年研究代表者らは、ポドフィロトキシンの生合成経路が植物種により異なり、それぞれ独自に進化してきたことを明らかにした。そこで本研究では、各種植物における独立したポドフィロトキシン生合成系の酵素遺伝子を網羅的に取得し、強力なポドフィロトキシン高生産系の構築を目指して研究を進めている。 本年度は、ポドフィロトキシン生合成経路におけるリグナンのO-メトキシ化の反応段階を触媒するO-メチル基転移酵素(リグナンOMT)と水酸化を触媒する酵素の遺伝子取得を進めた。そして、ポドフィロトキシン産生の合成生物学系を構築する基盤として、リグナンOMTに特徴的なアミノ酸残基を絞り込み、それらのうちリグナンOMT活性発現に寄与するか否かについて検証した。すなわち、Revolutionary trace法によって、リグナンOMTに特異的な4種のアミノ酸残基を絞り込んだのち、ポドフィロトキシン産生系のリグナンOMTの1種である5MTJOMTのアミノ酸配列をベースに、これら4種のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基にそれぞれ置換した組換え変異タンパク質を調製し、5MTJOMT比活性をそれぞれ測定した。その結果、2種の組換え変異タンパク質につき、比活性が5.6~23.0%にまで低下することが示され、これら2種のアミノ酸残基はリグナンOMT活性の発現に寄与している可能性が強く示唆された。また、リグナン水酸化酵素については、候補遺伝子を絞り込みその機能検証を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に従い、研究を進め、ほぼ計画通りの成果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き以下の研究を推進する計画である。 1)各種植物からのポドフィロトキシン(PD)生合成系の酵素遺伝子取得:シャク等を用い、異なる生育時期及び異なる組織・器官の合計10種程度の試料につき、標的酵素の活性の変動パターンを測定する。次いで、同じ試料について、全発現遺伝子の網羅解析データを取得する。発現遺伝子の中から、酵素活性変動パターンと同じ発現変動パターンを示す遺伝子を絞り込む。各酵素の機能に対応する特有の共通DNA配列の有無を指標に、絞り込まれた候補遺伝子について、候補遺伝子を数個まで絞り込む。絞り込まれた候補遺伝子につき、大腸菌もしくは酵母で発現させ、組換え酵素を得る。得られた組換え酵素につき、標的酵素活性の有無を生化学的に検証する。ここで、標的酵素活性を示した組換え酵素に対応する遺伝子が、目的の酵素遺伝子である。 2)各種植物のポドフィロトキシン生合成系酵素の生化学的機能解析・評価:得られたポドフィロトキシン生合成系酵素遺伝子につき、大腸菌もしくは酵母で大量に発現させ、組換え酵素を得る。次に、得られた組換え酵素につき触媒する反応の評価(基質特異性及び速度論解析)を行う。 3)取得酵素遺伝子を用いたポドフィロトキシン生合成系の微生物における構築:上記2) で得た各酵素の機能情報に基づき、化学合成が容易なマタイレジノールを初発として、連続する2~4反応段階毎の反応系(モジュール)を設定する。次いで、設定した各反応モジュールにつき、そこに含まれる酵素遺伝子を酵母または細菌に多重導入する。
|