研究課題
近年、天然資源由来で、人や環境に優しいグリーンな電子デバイスを志向した研究開発が益々重要になっている。その中、木材から得られる幅3-15 nmのナノセルロースで作る紙「ナノペーパー」は、再生産可能で生分解性を有するグリーンな電子デバイス基材として期待を集めている。しかし、ナノセルロースは絶縁体(電気抵抗値:10^14 Ω以上)であるため、電子デバイスに不可欠な半導体や導体には、依然として非再生可能資源である金属または石油由来の材料が使用されている。本研究では、オール木材ベースのグリーンエレクトロニクスの実現を目指し、絶縁性ナノセルロース自体のカーボン化による電子機能創発、すなわち、半導体化・導体化に取り組む。今年度は、①多孔質ナノペーパーの炭素化、および、②得られた炭素化ナノペーパーの電気特性評価を行った。①多孔質ナノペーパーの炭素化炭素化条件(ナノペーパーへのヨウ素蒸着処理、窒素ガス流量、低温での構造安定化処理、昇温・降温速度等)を精査することで、ナノファイバーネットワーク由来のナノ細孔構造を有する炭素化ナノセルロースペーパーを得ることに成功した。比表面積は炭素化温度の上昇に伴い増加し、1100℃で炭素化すると750 m^2 g^-1に達した。②炭素化ナノペーパーの電気特性評価ナノペーパーの炭素化温度(300~1100℃)によって、電気抵抗率を10^14~10^-2 Ω cm、バンドギャップを5.3~0 eVの範囲でダイナミックに遷移することを見出した。すなわち、絶縁性ナノペーパーの炭素化によって、半導体さらには導体的な電気特性を発現させることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
樹木ナノセルロースの炭素化プロセスを構築し、その条件によって、絶縁体から半導体・導体的な電気特性に遷移することを見出した。また、各種キャラクタリゼーションを行い、分子構造・結晶構造変化の解析も進んだ。よって、本研究は順調に進展していると評価できる。
ナノセルロースの炭素化による電気特性遷移メカニズムの解明、および、炭素化ナノセルロースの半導体・導体デバイス応用展開を進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 9件) 備考 (1件)
ACS Applied Materials & Interfaces
巻: - ページ: in press
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