近年、電子デバイスの生産量が急増し、枯渇性資源の消費が加速している。また、多量の電子ゴミが生じ、人や環境への悪影響を招いている。そのため、持続可能資源由来で、人と環境に優しい電子デバイスの創出が希求されている。その中で我々は、持続生産可能な樹木ナノセルロースを生分解性基材として応用し、電子ペーパー、メモリ、センサなど、高性能で人にも環境にも優しいグリーンな電子デバイス素子を開発してきた。しかし、ナノセルロースは完全な絶縁体であるため、電子デバイスの動作に必要な半導体や導体には、金属・石油など枯渇性資源由来の電子材料が不可欠であった。 そこで本研究では、全て樹木ベースのグリーンエレクトロニクスの実現を目指し、絶縁性ナノセルロース自体の電子材料化(半導体・導体化)に取り組んでいる。これまでに、ナノセルロースの段階的炭化戦略により、その電気特性を絶縁体~半導体~準導体の広範囲で細かくチューニング(電気抵抗率:10^14~10^-2 Ω cm、光学バンドギャップ:5.3~0 eV)することに成功した。さらに、高絶縁性ナノセルロースの内部で、高導電性グラフェンフラグメントが徐々に成長することにより、その電気特性が大幅かつ段階的に変調していることを明らかにした。今年度は、炭化ナノセルロースの電子デバイス応用を行った。その結果、湿度選択センシング機能と飛沫モニタリング応用(半導体)、バイオ燃料電池発電機能とLED点灯(準導体)まで、幅広い用途における有用性を確認できた。以上の様に、本研究によって、環境調和型・持続性の次世代グリーンエレクトロニクスに先鞭をつける成果が得られた。
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