研究課題/領域番号 |
18H02263
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
田中 祐志 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90207150)
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研究分担者 |
秋葉 龍郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (00221713)
石井 晴人 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (30251680)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロプラスチックス / 動物プランクトン |
研究実績の概要 |
動物プランクトンとマイクロプラスチックスの分布調査を、東京湾、日本海、および太平洋で実施した。東京湾の調査は実習艇「ひよどり」により、日本海の調査は練習船「神鷹丸」により、また、太平洋の調査は民間貨物船「ひまわり8」により実施した。東京湾では、水深25mの地点において水面から底上3mまで、水中ポンプにより深度1m毎に各層から1トンの水を100マイクロmメッシュで濾し取った。日本海では、深度50mから海面まで10m毎に、従来のプラスチック調査で用いられている目幅300マイクロmよりも細かい100、64、さらに7マイクロmのメッシュで濾し取り、動物プランクトンの消化管に入るほど小さい粒子の鉛直分布を調べた。太平洋では、本州東岸を航行中に表面海水を60海里毎に採取し、7マイクロmメッシュで濾し取り、プランクトンおよびプラスチック分析用試料を得た。これらの試料は、現在分析を進めている。さらに、昨年以前に東京湾奥部の羽田付近および東京湾口部の館山湾で採取され保管されていた100マイクロmメッシュで濾過されたプランクトン標本の分析も、本研究の補助的資料として、プランクトンだけでなくマイクロプラスチックスの濃度とサイズ組成を明らかにするために、始めた。さらに、カラーデジタル顕微鏡により粒子の形状と色彩を分析し、とくに日本海では、水面下40-50mという深い層でも、サイズ0.3ミリm以下のマイクロプラスチックスが漂っていることが明らかとなった。また、現場での浮遊粒子シルエット撮像については、光学系と制御系を整え、現場試験に向けて撮像記録と解析の準備を進めた。さらに、室内でのマイクロプラスチックス摂餌実験の準備として、高速度カメラに作動距離の長いレンズを組み合わせ、1ないし数ミリmサイズのプランクトンによる数十マイクロmサイズの粒子の採餌の実態を記録できる見通しが付いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現場でのサンプリングとして、動物プランクトンとマイクロプラスチックスの分布調査を、当初予定の東京湾で実施した。さらに、東京海洋大学練習船「神鷹丸」により日本海南西部で、また、民間貨物船「ひまわり8」により太平洋本州東岸でも試料を得ることが出来た。従来のプラスチック調査で用いられている目幅300マイクロmよりも細かい100、64、さらに7マイクロmのメッシュで濾し取ることにより、動物プランクトンに摂食され消化管に入るほど小さい粒子の鉛直分布を把握することを試み、サンプルは現在、分析を進めているところである。さらに、昨年以前に東京湾奥部の羽田付近および東京湾口部の館山湾で採取され保管されていた100マイクロmメッシュで濾過されたプランクトン標本も、本研究の補助的資料として、プランクトンだけでなくマイクロプラスチックスの濃度とサイズ組成を明らかにするために、分析を始めた。本研究で新規導入しているカラーデジタルマイクロスコープにより粒子の形状と色彩を分析し、とくに日本海のサンプルの分析の結果、水面下40-50mという深度でも、サイズ0.3ミリm以下の超マイクロプラスチックスが浮遊していることが明らかとなった。また、現場水中での浮遊粒子シルエット撮像については、光学系と制御系の整備を進め、次年度に向けての現場試験に向けて現場撮像記録と解析の準備を進めている。さらに、室内でのマイクロプラスチックス摂餌実験の準備として、現有の高速度カメラに作動距離の長いレンズを組み合わせ、照明を工夫することにより、1ないし数ミリmサイズの甲殻類プランクトンによる数十マイクロmサイズの粒子の採餌の様子を撮像記録できる見通しが付いた。
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今後の研究の推進方策 |
カラーデジタルマイクロスコープを活用して、初年度に採取したサンプルおよび本研究開始以前から定量的に採取され保管されていたサンプルの分析を進めていく。7月および9月には、それぞれ日本海と東京湾で、ポンプによる層別採集とシルエットプロファイラーを用いた鉛直方向の連続的な動物プランクトンとマイクロプラスチック粒子の分布調査を繰り返す。とくに、各深度から汲み上げた海水を7マイクロメートルメッシュで濾し取ることにより、海洋の現場において甲殻類プランクトンだけでなく繊毛虫類が摂食するとみられる微小な粒子にどの程度の濃度でマイクロプラスチックスが混在しているのかを見積もる。これほど小型のプラスチック粒子が、単位体積の海水にどれだけ浮遊しているかは、極めて興味深い。さらに、実験室において、高速度撮影によりカイアシ類およびクラゲ類のエフィラ幼生のプラスチック粒子摂食実験を進める。実験で摂餌させるプラスチックは、ポリスチレン、ポリエチレンなど、異なる種類の材質から様々なサイズの粒子を作成し、また、加工制作直後の物と、長時間(2週間以上)自然の海中に保持した後の物を用いて、天然環境においてプランクトンがプラスチックをどの程度の速度で摂餌(あるいは拒絶)するかを定量的に評価することを試みる。摂餌した場合には、プラスチック粒子が消化管に損傷を与えたり、消化管を閉塞したり、あるいはプランクトンの正常な行動を阻害したりすることがあるかどうかを調べていく。実験に用いる生物は、海産カイアシ類のOithona davisaeと、Acartia omorii、ミズクラゲのエフィラ幼生、および淡水産枝角類のDaphniaの一種を予定している。
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