研究課題
本研究では褐虫藻の代謝産物を指標としてサンゴ礁生態系の食物網に新たなルートを提案しようとするものである。また、その過程で褐虫藻とサンゴ等宿主動物の間で行われる物質のやり取りについてもより詳細な知見の蓄積が期待される。本年度は、ウスエダミドリイシ(Acropora tenuis)の幼生に実験室内で褐虫藻を取り込ませて人工的な共生体を作出し、共生時にのみ現れる特徴的な物質の探索を試みた。幼生には野外のサンゴ幼体も持つ褐虫藻(Symbiodinium microadriaticum)と、本来野外のサンゴ幼体は持たない褐虫藻(Symbiodinium natans)の、2種の培養株をそれぞれ添加して取り込ませた。コントロールとして用意した褐虫藻を取り込ませていない幼生と、上記の褐虫藻を取り込んだ幼生の代謝物をそれぞれ比較したが、明瞭な違いは認められなかった。幼生内の褐虫藻細胞数が少なかったためかもしれない。また、本研究ではこれまでにサンゴ由来の褐虫藻培養株(S. microadriaticum)に特徴的な化合物(ホモトリゴネリン)を見いだしているが、本年度はこの化合物が実際にサンゴ礁の動物プランクトンに蓄積しているかどうかも確認した。動物プランクトンはサンゴが多い場所と少ない場所、ならびにサンゴ礁の沖合でそれぞれ2020年7月に採取した。いずれの場所でもOithona属、Acartia属やパラカラヌス科を含むカラヌス目種、およびNauplius幼生が卓越していた。これらの動物プランクトン試料からホモトリゴネリンに特に注目して分析したところ、ホモトリゴネリン量はサンゴが多い場所の動物プランクトンで最も多く、サンゴ礁の沖合の動物プランクトンで最も少ない結果となった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Genome Biology and Evolution
巻: 13 ページ: 1~18
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Molecular Biology and Evolution
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