研究課題/領域番号 |
18H02272
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平松 尚志 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10443920)
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研究分担者 |
東藤 孝 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (60303111)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子輸送 / バイオリアクター / 卵 / ビテロジェニン / メダカ / 生物工学 |
研究実績の概要 |
本研究は、魚類の卵や仔稚魚へ、様々な有効物質を輸送する分子輸送システムを開発することを目標とする。本年度は以下の成果を得た。 1 輸送体候補であるリポビテリン重鎖(LvH)並びにリンカーである単量体ストレプトアビジン(mSA)の融合蛋白質(LvH-mSA)をインサートとして持つ発現ベクターを作製し、受精直後のメダカ胚ゲノムに遺伝子導入を行った。全身性で恒常的な発現が予期されるCAGプロモーター系統と、肝臓特異的でエストロジェン誘導性発現が予期されるトラウトビテロジェニンプロモーター(tVGP)系統を作製した。2種の系統について、組み換え初世代及び子孫1世代目への外来LvH-mSA遺伝子の導入が確認されたが、CAG系統では、LvH-mSA mRNAの発現および同蛋白質生産は確認できなかった。一方tVGP系統では、同発現・同生産がエストロジェン曝露条件下で確認できた。 2 tVGPプロモーター下流に、LvHを短縮した配列(SE及びCoreとする)を2種選択し、蛍光蛋白質mCherryとの融合蛋白質をインサートとして持つ発現ベクター(tVGP/SE-mCh及びtVGP/Core-mCh)を作製し、特に前者では組換え初世代メダカを作出し育成中である。 3 メダカ由来のVGPプロモーター(mVGP)の利用に先立ち、最も強力なプロモーターを選択するため、メダカの4種VtgサブタイプmRNA測定系の確立とそれぞれのプロモーター部位のcDNAクローニングを開始した。 以上の1~3の成果は、本研究の到達目標である融合輸送体の生体内大量生産とその性状解析の基盤となるものであり、今後の研究の進展が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度計画に挙げた全ての計画について、ほぼおおむね順調に進行している。一部予想と異なり、全身性発現プロモーター(CAG)を用いた場合は、融合輸送体の発現・生産が確認できなかった。しかし、エストロジェン誘導性プロモーター(VGP)を用いた試験系で同発現・生産が確認できたため、今後の研究の進展に問題は無いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、CAGプロモーターを用いた試験系は中止し、VGPプロモーターを用いた試験系のみに絞り実験を進める。現在、組換え初世代tVGP/LvH-mSAから得られた子孫1世代目(F1)や組換え初世代tVGP/SE-mCh系統を維持しており、前者は組換えF1同士を交配しホモ型組換え個体を含むF2群を作出するとともに、同F1より得た卵試料を用いてLvH-mSAの検出や精製を試みる。後者も同様な交配を進め、F1あるいはF2卵における蛍光性を確認することで、本研究の輸送コンセプトを実証する。tVGP系統ではさらに短鎖長の融合輸送体作製を目指し、SE-mSAやCore-mChを発現する組換え魚作出に着手する。また、野生魚におけるmVGPのクローニングやVtgサブタイプ測定を進める。この試験によりメダカにおいて高発現なmVGPを予測し、今後のtVGPからmVGPへの転換についての基盤を得る。
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