研究課題
1) 多個体を用いた領域特異的解析による性決定遺伝子の同定2018年度は、ターゲットエンリッチメント法とAmplicon sequencing法を組み合わせて、領域特異的な関連解析解析を確立した。2019年度は、この手法と様々な全ゲノムリシーケンス解析法(トリオ法やプール法など)を併用して、クサフグの性決定領域を解析した。なお、全ゲノムデータ取得の費用が低下傾向にあるため、これまでに確立した領域特異的解析法は「多数個体の関連解析」ではなく、その前段階にある「参照配列の高精度化」に活用した。その結果、クサフグの性決定領域は約100kbの連鎖不平衡ブロックからなり、その中には複数の遺伝子が存在することが見えてきた。さらに、クサフグに適用した手法を用いることで、他のフグがもつ性決定領域(クサフグとは異なる)も同定できる可能性が見えてきた。また、GRAS-Di法やgenome-wide Ampli-seq法で、性決定遺伝子座が比較的低コストで同定可能なことも明らかにできた。2)性決定遺伝子が駆動する遺伝子ネットワークの解明2018年度の解析から、クサフグではAppl1ではなく、その近傍にある遺伝子が性を決定している可能性が考えられた。2019年度は、これら候補遺伝子群のひとつに着目して、その機能欠失体をゲノム編集法で作出した。F0世代における表現型を解析したところ、ターゲット遺伝子に変異が導入されている個体で、性比が大きく偏ることが判明した。したがって、本ターゲット遺伝子が性を決定している可能性が高いと考えられた。カンパチについては、2018年度の解析から、その性決定遺伝子が性ホルモンの代謝に関わる可能性が浮上していた。そこで2019年度は、当該遺伝子の生化学的な機能解析をおこなった。その結果、この遺伝子が性ホルモン代謝酵素をコードすることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
新規性決定遺伝子の発見に成功し、論文化することができたため。
1) 多個体を用いた領域特異的解析による性決定遺伝子の同定2018年度は、ターゲットエンリッチメント法とAmplicon sequencing法を組み合わせて、領域特異的な関連解析解析を確立した。2019年度は、この手法と全ゲノム解析法を併用して、クサフグの性決定領域を解析した。その結果、クサフグの性決定領域は約100kbの連鎖不平衡ブロックからなり、その中には複数の遺伝子が存在することが見えてきた。今年度は、連鎖不平衡ブロック内における変異蓄積の状態を集団遺伝学的に解析し、ブロック内の不均一性、すなわち、性決定遺伝子だけがもつ特徴をあぶりだし、性決定遺伝子同定の指標を得ることを目指す。多くの魚種は性染色体が未分化状態にあることが知られていることから、クサフグと似た状態の性染色体をもつ魚種は多数あると予想される。したがって、クサフグから得られるデータは、今後、他の魚種の性決定遺伝子同定に大きく貢献すると期待している。2)性決定遺伝子が駆動する遺伝子ネットワークの解明2018年度の解析から、クサフグではAppl1の近傍にある遺伝子が性を決定している可能性が高まった。そこで2019年度は、候補遺伝子群のひとつについてゲノム編集法により変異導入を試みた。顕微注入F0世代における表現型を解析したところ、変異導入個体において性転換現象が有意に認められ、本遺伝子が性を決定している可能性を見出した。F0世代における解析は、一般に受け入れられにくが、クサフグを始めとする非モデル生物は世代時間が長くで、標準的なF2世代における解析は困難である。そこで、今年度も昨年と同様の解析を行い、試行回数とサンプル数を増やすことによって、統計的な信頼性を高めて結果を得ることを目指す。さらに、本候補遺伝子に着目つつおこなう網羅的遺伝子発現解析により、本候補遺伝子が駆動する遺伝子ネットワークを明らかとする。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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