研究課題/領域番号 |
18H02279
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
緒方 博之 京都大学, 化学研究所, 教授 (70291432)
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研究分担者 |
長崎 慶三 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (00222175)
吉田 天士 京都大学, 農学研究科, 教授 (80305490)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 巨大ウイルス / 海洋微生物生態系 / 進化 |
研究実績の概要 |
国際共同研究Tara Oceans由来のデータに基づき、全球規模の海洋メタゲノムデータから巨大ウイルス(NCLDV)の地理分布を解析し、真核生物宿主の分布と強い相関が認められること、北極海でNCLDVの系統固有性が高いこと、表層Chl a濃度が高い海域で、NCLDVの沈降が起こっている可能性を初めて見出した(Endo et al., 2020)。この結果は、巨大ウイルスが生物炭素ポンプに影響を及ぼしていることを示唆する。この成果を受け、次の研究では、巨大ウイルスも含む多様なウイルスの系統地理分布に基づく生物炭素ポンプ効率の予測可能性の検証を行った。具体的には、偏最小二乗回帰分析を用いて、生物炭素ポンプ効率を、巨大ウイルス、ssDNAウイルス、RNAウイルスの群集組成から予測可能であること明らかにできた(Kaneko et al., 2021)。さらに、NCLDVに属するイミテルウイルス目の群集構造を詳細に解明するためのメタバーコード法(「メガプライマー法」)を、複数の縮重プライマーを混合するカクテル法により、効率よく、大規模試料に応用できる可能性を示した(Prodinger et al. 2020)。巨大ウイルスの分離・ゲノム解析においては、申請者らが提案しているメドゥーサウイルス科に属するウイルスの新規株を、京都府宇治市近郊から分離することに成功し、そのゲノム配列を決定した(Yoshida et al., 2021)。また、ノルウェーのベルゲン大学の研究者と共同で、プリムネシウム目に属するハプト藻に持続感染する巨大ウイルスPkV-RF01のゲノム解析を行った。興味深いことに、エネルギー代謝に関わる遺伝子を多数保持しており、持続感染を行うという表現型との関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海洋メタゲノム解析から巨大ウイルスが生物炭素ポンプに関連している可能性を強く支持する結果を得たことは、海洋ウイルス学における大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
メタゲノムデータに基づく宿主予測法の開発が重要であると認識し、それを進める。また、メガプライマー法の改良版が確立したので、日本沿岸、北極海などさらな海域由来の試料に応用し、巨大ウイルスの生態学的役割を明らかにする必要がある。
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