研究実績の概要 |
第一に、高知県浦ノ内湾で1年半に及ぶ長期観測を行い、真核微生物、真核微生物に感染する巨大ウイルス(イミテルウイルス目)、原核生物の群集遷移解析を行った。全ての微生物・ウイルス群集が四季による季節変動を示すことを明らかにした。特に、巨大ウイルスの群集構造が季節変動を示すことは本研究で始めて明らかになった。また、群集変動速度が群集により異なることが示された。具体的にはウイルスが最も速く、次に真核微生物であり、原核生物の群集変動速度は最も低かった。これは、微生物群集を構成する種のニッチ幅が、微生物群集ごとに異なることに由来すると考えられた。例えば、ウイルスの出現は真核生物の出現に依存するが、同一の真核微生物に感染するウイルスがその時々で増加したり、しなかったりすることが、ウイルスの群集変異速度が高い理由と考えられた(Prodinger et al. 2022)。同様の解析を、時系列ではなく、局域(北極海)で同時期に行った解析でも、真核微生物群集と巨大ウイルス群集に強い相関が得られた(Xia et al. 2022)。これらの結果に基づき、頻度分布から巨大ウイルスと真核微生物宿主の関係を予測する方法を精査した。その結果、共起分析解析により、ある程度の予測が可能であることを示すことができた(Meng et al., 2021)。巨大ウイルスの遺伝子進化に関しても、真核微生物の初期進化過程で、細胞内骨格・細胞内輸送に関わる遺伝子をウイルスと生物で相互に水平伝播している様相を確認した(Da Cunha et al., 2022, Kijima et al., 2021)。巨大ウイルスの一種であるメドゥーサウイルスのトランスクリプトーム解析を行い、感染初期に、核内にウイルス由来タンパク質を輸送し、核のリモデリングが行われる可能性を支持する結果を得た(Zhang et al., 2021)。
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