研究課題/領域番号 |
18H02281
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小林 亨 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (30221972)
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研究分担者 |
明正 大純 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (00781808)
小林 靖尚 近畿大学, 農学部, 准教授 (10643786)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 性分化 / 性転換 / 性分化関連遺伝子 / メダカ / クエ |
研究実績の概要 |
ミナミメダカ(O. latipes)、キタノメダカ(O. sakaizummii) では、17alpha-methyltestostreone (MT)及び、estradiol-17beta (E2)を受精卵から孵化まで曝露することによって性転換を誘導できる。しかし、その頻度は種間及び系統間で大きな違いが見られる。性転換誘導過程における性分化関連遺伝子の発現動態を個体ごとに解析したところ、各系統でみられる性転換誘導率の差異は、孵化仔魚におけるGsdfの発現レベルと相関することが明らかとなった。一方、Gsdfの発現レベルがXY、XXと同様であっても必ずしもXX性転換(オス化)、XY性転換(メス化)は起こらない場合がある。性ホルモンによる曝露で性転換がほとんど起こらない近縁種ジャワメダカ (O. javanicus)の遺伝的メスではMT曝露(10 ng/mL)による性転換誘導は起こらない。しかし、処理個体全てで遺伝的オスと同様なGsdfの発現誘導がみられるが、Dmrt1発現は誘導されない。90%以上のXX性転換を誘導できるMT 0.2ng/mL曝露によるミナミメダカ Hd-rRの性転換過程では、Gsdfの発現誘導が起こった後、精巣分化に必須であるDmrt1の誘導はすぐには起こらない。これらからXX性転換誘導では、Gsdf発現誘導とDmrt1の発現を繋ぐ未知の経路があることが示唆される。 水産有用種であり、雌性先熟魚種のハタ科魚類のクエ(Epinephelus bruneus)では、性転換誘導脳を検討した結果、年齢を問わずいつでもメスからオスへの機能的性転換の誘導が可能となった。また、性転換精巣分化過程における卵巣白膜に存在するステロイドホルモン産生細胞群(SPCs)の挙動を解析した結果、性転換初期の白膜に局在したSPCsの一部が生殖腺実質部へと移動することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メダカの性転換過程における性分化関連遺伝子の発現プロファイルの詳細がさらに明らかになり、新たな制御機構が示唆された。 水産有用種のクエでは、コロナ禍の影響により性転換オスの精子受精能の検討ができなかったが、性転換精巣分化誘導過程の解析系が進化したことにより、クエの性転換誘導分子機構の理解のための基盤整備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
ミナミメダカ及びキタノメダカのGsdf、Amhr2、Dmrt1変異体を用いた生殖腺分化過程における性分化関連遺伝子ネットワークの詳細を明らかにする。さらに精巣分化におけるGsdsf-Dmrt1間の経路を明らかにするために、この過程において機能的に関与する遺伝子の探索を行う。 クエに関しては、性転換精巣分化誘導によって作出された成熟性転換雄から得られた精子の質(受精能)を確認及び、メスの卵成熟誘導についても検討する。また、現場での実用試験を計画している。
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