研究課題/領域番号 |
18H02284
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 順一 京都大学, 農学研究科, 教授 (80356302)
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研究分担者 |
北野 慎一 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20434839)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 農業経済学 / 計量経済学 / 応用ミクロ経済学 / 中国農業論 |
研究実績の概要 |
本年度は,わが国で実施されている「日本型直接支払交付金制度」のなかの「中山間地域等直接支払交付金制度」を対象として,制度設計の特質を標準的なエージェンシー・モデルを使って理論的に解明した。また同時に,傾向スコア・マッチング(propensity score matching)法を用いて,制度の効果(平均処理効果)を推定した。計量分析では「農林業センサス集落営農カード」(農水省)から抽出された近畿圏4千余の農村集落をデータとして利用した。 理論モデルの考察によれば,「交付金制度」は,政府(市町村)と参加集落の協定に基づいているが,それはナッシュ(Nash)均衡としての特質を持っている。均衡解は社会的便益の最大化とは矛盾するが,中山間地域に対する所得補償としての機能を果たしており,政策目標とも合致している。 計量分析結果は,施策により耕作放棄地の発生が十分に抑止されたことを示唆しているが,「交付金制度」が,若年労働力および農業後継者の確保や農村社会の活性化には,必ずしも寄与していないことを示している。 さらに本年度は,中国甘粛省で独自に収集したデータを利用して,農地利用に関する計量分析を行った。操作変数法を用いた回帰分析の結果は,直接支払制度の対象である農業生産者組織(農民専業合作社や龍頭企業)が,当地における農地貸借市場の発展に寄与していることを示唆している。また,地元公的機関(請負経営権・農地利用権に関する紛争に介入する組織)が農地貸借を仲介することで,取引費用の節減に多大な貢献していることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国での現地調査を担う協力機関の担当者が,都合により事業の継続を辞退したため,2019年度の途中から,協力機関を変更した。その結果,調査票を用いての聞き取り調査,データの収集が本年度に持ち越された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度が最終年度であることから,中国甘粛省での本調査(データ収集)を出来るだけ早い時期に実施する。データを回収後,計量的な分析を行い,成果をとりまとめると同時に,それを海外の学術雑誌に投稿する。また,日本・中国でワークショップを開催し,本研究課題の成果を報告する。
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