研究課題/領域番号 |
18H02292
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
雨河 祐一郎 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (00743634)
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研究分担者 |
森高 正博 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20423585)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Q-GAP / 適正農業規範 / 食の安全 / キャベツ / とうがらし / アスパラガス / 残留農薬検査 / タイ |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は、「Q-GAP認証農家と非認証農家との比較を通じて、Q-GAP認証の生産工程管理における生産農家のコンプライアンスの実態を解明し、生産活動におけるQ-GAPの有効性を検証する」である。これに関し、2019年度には、雨河がチェンマイ大学の研究協力者グループの助力を得て、タイ北部チェンマイ県におけるキャベツの栽培地域を訪問し、Q-GAP認証農家約50世帯、非認証農家約100世帯の社会経済調査を行い、併せて、キャベツのサンプルを収集して、残留農薬検査を行い、得られたデータの分析を進めることを計画していた。調査を実施した結果、実際には、Q-GAP認証農家39世帯、非認証農家96世帯からデータとサンプルを得られた。これまでに社会経済調査のデータセットが完成し、現在その分析を進めている。また、残留農薬検査では、有機リン酸エステルおよびピレスロイド系の化学成分の解析を予定していた。これまでにその基本分析は終わり、有機リン酸エステルについては、Q-GAP認証農家のうち35.9%、非認証農家のうち41.1%の農家から、また、ピレスロイドについては、認証農家のうち34.2%、非認証農家のうち53.1%の農家から農薬の化学成分が検出された。今後は統計的有意差の確認や検出された量の比較などを進めていく。第二の目的は、「多様な市場性との関係における流通上の有効性に関して、Q-GAPが市場の諸アクターからいかなる評価を受けているかを明らかにする」である。 この目的については、2018年度に森高がPanamasおよび雨河の協力を得て中部タイにおいて行ったアスパラガスに関する流通業者調査について、すでにその分析を終えた。また、同年度Panamasがアスパラガスについて行った消費者調査については、現在、その結果の分析を遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チェンマイ県全体に散在しているキャベツのQ-GAP認証農家をタイ農業省から得られた認証リストから同定し、訪問調査を行うことは、もともと書面上にあった認証者数が限られている(50数農家)ことから、当初から困難が予想され、実際に、多大な困難を伴うものであった。しかし、2020年度に調査を行う予定のとうがらしを除いて、キャベツのほかに、本研究の趣旨に合う適切な作物が当該県に存在しないことから、出たとこ勝負の調査となった。その中で、39のQ-GAP認証農家と、それらの農家周辺に居住する96の非認証農家からデータとサンプルを得られたことは、満足できる結果であったと考える。なお、実際のQGAP認証農家数が39にとどまったのは、認証者リストにある対象者と連絡がつかなかったり、書類には被認証者とあっても、実際には認証期限を過ぎていたりした制約による。2019年12月にその調査が終わり、社会経済調査のデータセットが2020年2月に仕上がったため、その分析がやや遅れているが、残留農薬検査については、すでに根幹部分の分析を終えており、その点も満足できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、研究目的1.「Q-GAPの生産部門における有効性の分析」については、雨河がチェンマイ大学の共同研究者(Suratお よびTanyaporn)の助力により、とうがらしの栽培地域(タイ北部チェンマイ県)を訪問して、Q-GAP認証農家約80世帯、 非認証農家約80世帯の調査を行う。その際、相手方の同意等を得た上で調査研究を遂行する。その後、雨河は農家調査結果の分析を行い、Suratは、調査時に採取したとうがらしのサンプルをもとに、残留農薬検査を行い、その結果を分析する。また、同様の手続きで昨年度入手したキャベツに関するデータと残留農薬検査用のサンプルの分析、論文執筆、投稿を進める。次に、研究目的2.「Q-GAPの流通部門における有効性の分析」については、2019年度に森高がPanamasおよび雨河の協力を得て中部タイにおいて行ったアスパラガスに関する流通業者調査について、すでにその分析を終えているので、 研究論文にまとめて出版する。また、Panamaがアスパラガスについてバンコクで行った消費者調査についても、その結果を分析し、研究論文にまとめて出版する。
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