研究課題/領域番号 |
18H02294
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 修一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90355595)
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研究分担者 |
西田 和弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90554494)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 暗渠 / 農地排水 / 経年劣化 / ストックマネージメント / 地下排水 / 粘土質 / 水田転換畑 |
研究実績の概要 |
施工後年数の経過した暗渠のある2つの粘土質水田転換畑において、暗渠排水量、作土内水位、管近傍のテンシオメーター圧を測定した。 新潟県上越市の水田転換畑では、暗渠排水量は、3mm/h 付近で頭打ちになり、吸水渠に至る経路上で、流量が律速されていることがわかった。測定された作土内水位とテンシオメーター圧、暗渠排水量と排水路水位から推定した吸水管内圧力から、作土内の水平流と暗渠直上の鉛直流から成る排水経路に沿う全水頭分布の経時変化を求めた。降雨直後には、作土内水平流の水位勾配は大きく、疎水材の上端は不飽和になっていた。排水量が 2mm/h を超えると、作土内水平流の水位勾配がなくなる。その後、管近傍の正圧が 20cmH2O 程度になると、作土内水平流の水位勾配が再び大きくなる。このとき、渠上耕盤のテンシオメーター圧は -2cmH2O 程度になっており、疎水材上端では、不飽和流になっていると考えられた。排水経路を直列抵抗モデルと考え、水平流と鉛直流の通水抵抗を水頭分布から計算した。排水量が多いときは、通水抵抗の値は一定値を取り、鉛直流の通水抵抗の方が水平流の通水抵抗より大きく、鉛直流が暗渠排水量を律速していることがわかった。排水量が減少すると、通水抵抗は急激に増加する。通水抵抗が一定値から増加を始める時刻は、渠上耕盤のテンシオメーター圧が負圧になる時刻と一致しており、これは疎水材上端が不飽和流になっているためと考えられた。管近傍の正圧が排水量の増加とともに上昇することから、鉛直流の通水抵抗の大部分は、吸水管の周囲と内部の間にあると考えられ、その原因は、管周囲のもみ殻疎水材への土粒子の混入であった。 一方、大川市の水田転換畑においても、暗渠排水量は、暗渠に至る土層の通水性で律速されていたが、疎水材が砕石であったため、吸水渠周囲の通水抵抗は小さく、もみ殻疎水材との違いがみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた現地圃場において、暗渠への排水経路上の水圧分布を計測し、その結果から暗渠排水量を律速している区間の特定を実際に試行することができた。また、疎水材の分析により得た泥土の混入状況(攪乱調査による暗渠状態の評価結果)は、水圧の測定から得られた抵抗の大きな区間(非侵襲的手法による評価結果)と良く対応しており、この方法による通水阻害区間の特定は可能であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題外のプロジェクトにより進めている土層内の水圧の鉛直分布の同時に計測できるセンサーも導入し、効率的に降雨時の暗渠周辺の水圧分布の経時変化を収集し、昨年度確認できた本推定手法の有効性をさらに裏付ける。また、暗渠を用いた地下灌漑時の水圧形成についても、理論的な分析を開始する。
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