研究課題
グロースチャンバーとフィールドにおいて植物の環境応答の違いをもたらす要因として,人工光源と太陽光における遠赤色光の割合の違いに注目し,遠赤色光の異なる光照射下で蒸散要求の増大に対する植物の水分ストレス応答を調べ,ストレス応答が異なる要因を検討した.キュウリ実生をグロースチャンバー内で,遠赤色光を含む照射光(FR+)もしくは遠赤色光を含まない照射光(FR-)で育成した.光照射にはLEDパネルを用た.発芽後,本葉展開までの育成環境は,気温28℃,相対湿度90%とし,本葉展開後に相対湿度を30%に低下させ,蒸散要求を増大させた.FR+のキュウリ実生は,蒸散要求増大後に大きな萎れが観察されたが,FR-ではそのような萎れは観察されなかった.そのような違いが生じた理由を調べるために,第1本葉の気孔コンダクタンスおよび水ポテンシャルを,ポロメータおよびサイクロメータを用いてそれぞれ測定した.その結果,気孔コンダクタンスは,FR-においてFR+よりも大きい傾向であったが,葉内水ポテンシャルはFR+においてFR-よりも大きく低下した.これはFR-では気孔がより開いていて水分が失われやすい状態であったにも関わらず,葉の水分状態を維持できたことを意味する.このような各光照射下における気孔コンダクタンスと葉内水ポテンシャルの傾向から,FR-では葉内の通水性が高くなることで,蒸散による水損失の増大に対して木部から葉肉細胞により円滑に水を供給できたと推察された.本研究では,その因果関係は十分には明らかにできなかったが,このことが遠赤色光の割合の異なる光照射下における塩ストレスや強風ストレスに対する植物応答の違いをもたらした可能性がある.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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HortScience
巻: 55 ページ: 1433-1437
10.21273/HORTSCI15159-20