研究課題
根圏は、「植物根から影響を受ける土壌」と定義される根の周りの微小な領域の土壌である。根圏という概念は1904年にドイツの科学者Hiltnerに提唱されて以来,植物の生育に重要な領域であるということが広く考えられてきた。しかし、根圏は土壌の中で植物の生育に従って変化するため、圃場環境で根圏と非根圏を区別することは難しかった。私たちはダイズ根から分泌されるイソフラボン、ダイゼインをモデルとして、根から分泌された植物代謝物の根圏中の動態から根圏域を定義することを目指した。まず、水耕栽培で得られた各生育段階のダイゼイン分泌量と、標品のダイゼインとその配糖体の分解速度から土壌での安定性を求め、根圏域での代謝物の動態をシミュレーションするために、土壌物理学分野で水やイオンの移動の解析にこれまで用いられてきた流体モデルを取り入れることとした。移流分散方程式を用いたダイゼイン移動の支配方程式に、分泌量、分解速度、土壌分配実験や土壌物理性解析により実験的に得られたパラメターを導入することにより、根圏でのダイゼインの移動をシミュレーションした。その結果、ダイゼインの移動は根から数ミリの極めて微小な領域にとどまることが算出された。また、圃場で根からの分泌を直接測定し、シミュレーションを行った。これを実証するために、ダイズを根箱や圃場栽培により検証した結果、このシミュレーション結果が正しいことが確かめられた。移流分散方程式による根圏代謝物シミュレーションがダイゼインの動態推定に適応可能であることが明らかになった。このシミュレーションは他の植物代謝物の根圏での動態解析にも広く用いることができ、今後様々な根圏代謝物の動態と機能解明へ活用できる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 備考 (2件)
Plant Physiology
巻: 0 ページ: in press
10.1093/plphys/kiab069
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
10.1093/bbb/zbab017
Plant Direct
巻: 4 ページ: e
10.1002/pld3.286
Plant, Cell & Environment
巻: 43 ページ: 1036~1046
10.1111/pce.13708
http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/lpge/index.html
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2020-01-14