研究実績の概要 |
一酸化二窒素(N2O)は強力な温室効果ガスであるとともにオゾン層破壊物質でもある。農業はN2Oの最大の人為的排出源であり、農耕地におけるN2Oの発生削減技術の開発は急務である。N2Oの発生経路は主に微生物による硝化および脱窒(細菌脱窒、硝化菌脱窒、糸状菌脱窒)である。 本課題では、我々がこれまでに開発した温室効果ガス連続測定装置を用いて、茨城県つくば市の黒ボク土ライシメーター圃場において3年間にわたるN2Oフラックス測定を行った。その結果、施肥後のN2O発生量は硝化抑制剤区のほうが尿素区よりも有意に低かった。一方、収穫残渣によるN2O発生量は処理区による差がみられなかった。また、キャベツ収量は処理区による有意差がみられなかった。このため、面積あたりN2O発生量および収量あたりN2O発生量は硝化抑制剤区のほうが尿素区よりも低かった。また土壌中無機態窒素の解析の結果、硝化抑制剤により硝化が抑えられていた。以上の結果から、硝化抑制剤は肥料由来N2O発生量を削減するとともに収量を維持しながら追肥の労力を削減できることが明らかになった。またレーザー分光N2O同位体計(CW-QC-TILDAS-SC-S-N2OISO; Aerodyne Research Inc., Billerica MA, USA)を用いた自然安定同位体比解析の結果、施肥後のN2O発生は主に硝化由来であり、収穫残渣から発生するN2Oは脱窒(細菌および糸状菌)由来であることが明らかになった。本研究成果は農耕地から発生する温室効果ガスの削減技術の開発に貢献するものである。
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