研究実績の概要 |
新規DDT分解菌Streptomyces sp. 885株は最初に還元的脱塩素反応によってDDDを生成し、DDOHを経由してDBPまで分解代謝することが分かった。さらに、DBPを初期基質とした場合も分解した事から、本菌株がDDTをDBPよりも下流まで代謝することが示唆された。一方で0.0126mM DDOHを初発とした場合は約34%がDDAに変換され、DDAを初発とした場合は分解しなかった事から、DDAがデッドエンドとして蓄積する不完全な分解代謝経路を有することが判明した。これら分解代謝経路のうち、初発脱塩素反応に寄与するDDTデハロゲナーゼ遺伝子を比較ゲノム解析によって解明する目的で、UV照射又は変異原物質による処理によるDDT脱塩素能欠損株の取得を試みが、欠損株の取得には至らず、DDTデハロゲナーゼ遺伝子を同定することはできなかった。 キュウリの葉柄内単離・同定した新規PCP分解菌Bacillus sp. PCP15株はPCPを未知代謝物に変換しており、これらを分取・乾固して単結晶X線構造解析に供した所、PCPがリン酸抱合した新規代謝物のPCP phosphate(PCP-p)であることが判明した。PCP15株はPCPを等量のPCP-pへ変換したが、合成したPCP-pを初発基質とした場合は分解しなかったことから、デッドエンド化合物であることが判明した。好気性細菌におけるPCP分解代謝メカニズムはこれまで、pcp遺伝子群依存的なものやhcbB遺伝子群が関与するものが知られており、どちらの代謝経路も中間産物として2,3,5,6-tetrachloro-p-benzoquinoneを経由する共通点がある。一方、湛水土壌中など還元的条件下におけるPCPの微生物分解代謝経路も古くから提唱されており、本研究で得られた新規代謝経路を含め、環境微生物はPCP分解代謝機構を多様に進化・獲得していることが示唆された。
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