研究課題/領域番号 |
18H02328
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
舟橋 弘晃 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (50284089)
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研究分担者 |
中塚 幹也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40273990)
若井 拓哉 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60557768)
大槻 高史 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (80321735)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 卵母細胞 / ミトコンドリア / オートファジー |
研究実績の概要 |
本研究は、卵細胞質を量的・質的に改変(ミトコンドリアDNA(mtDNA)コピー数制御を含む)することで、卵母細胞の時空間的制御が発生能に関与する機構を明らかにし、発生・妊孕能の高い卵母細胞の作出系を構築することを目的としている。 令和元年度は以下について取り組んだ。 (1)卵細胞質mtDNAコピー数の成熟時の動態解析:IVM培養前後の卵母細胞中ミトコンドリアDNAコピー数は体外成熟前後で有意差が認められなかったが、MF由来卵母細胞中のDNAコピー数と比較してSF由来卵母細胞中のそれは有意に低いことが明らかになったので、ミトコンドリア合成に係る遺伝子を強制発現させることでどのような影響が出るのかを調べるために種々の手法を試した。 (2)ミトコンドリア融合・分裂能の解析と卵細胞質オートファジー活性の成熟・発生時の変動解析: 中卵胞(MF:直径3-6 mm)由来卵母細胞と小卵胞(SF:直径3 mm未満)由来卵母細胞でオートファジー能について調べた。その結果、体外成熟および初期発生能を指標としたオートファジー阻害剤や同促進剤に対する反応がMF由来卵母細胞はそれらに反応する能力があるものの、SF由来卵にはそれらがないことを明らかにした。また、オートファジー能にも影響することが知られているトレハロースがSF由来卵母細胞の体外成熟および初期発生能を改善することを明らかにした。一方、卵母細胞からの精子ミトコンドリア除去にオートファジーが関わる可能性を示した。 (3)ケージドアミノアシルtRNAのミトコンドリア制御への適用: 卵母細胞への光増感剤とペプチド/タンパク質を組み合わせた分子ツール(機能性光増感ペ プチド:Functional Photosensitizing Peptide/Protein; FPP)の製作と卵への導入を引き続き検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究全体(上記(1)~(3))について、(1)卵細胞質mtDNAコピー数の成熟時の動態解析については、おおむね順調に進展しているが、(2)ミトコンドリア融合・分裂能の解析と卵細胞質オートファジー活性の成熟・発生時の変動解析が予想以上に進展し、学術論文1編を既に公表し、もう1編は投稿中である。一方、(3)については進展が苦戦中であるが、引き続き、構造を調整するなどの工夫を続ける予定である。以上のことから、全体として、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の申請書の研究計画の通り、下記の方向で研究を推進予定である。 (1)卵細胞質mtDNAコピー数の動態解析について、成熟時だけでなく初期発生時の解析を進めるとともに、ヘテロプラズミーや微小管・マイクロフィラメントの局在との関係について解析を進める。mtDNA複製の促進に関係する因子の動態や観察ステージにおける役割を明らかにし、その制御を試みる。 (2)細胞質・ミトコンドリア等の注入による卵細胞質の量的改変を試みる。さらに、ミトコンドリア融合・分裂能の制御の影響に関する研究(特に、ミトコンドリアDNA複製を促進する因子の強制発現の影響など)を継続する。 (3)ケージドアミノアシルtRNAのミトコンドリア制御への適用について、さらにミトコンドリア合成促進因子などに着目して制御の可能性を検討する。
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