研究課題
ニワトリにおける油脂の味覚受容機構を解明するため、以下の3つの項目について研究を進めた。【項目1】ニワトリ脂肪酸受容体のアゴニストおよびアンタゴニストの同定:ニワトリ脂肪酸受容体の新規アゴニストについてカルシウムイメージング法により探索を進め、R1年度には3種類のアゴニストを同定した。また、アンタゴニストの探索も進めた結果、候補物質が見つかって来た。今後はアンタゴニストも同定し、細胞実験や行動試験で脂肪酸受容体の関与を検証するような実験に用いることを目指す。【項目2】ニワトリを用いた行動試験による油脂の応答評価:前年度までにニワトリを用いた味覚嫌悪学習により、ある脂肪酸に対して嫌悪学習が成立することを見出した。このことからニワトリが口腔内で脂肪酸を化学受容していることが示唆された。今年度の行動試験の進捗はあまりなかったが、今後は脂肪酸だけでなく油脂を用いた嗜好性試験や味覚嫌悪学習試験も行い、油脂の化学受容がニワトリでどのように行われているのかをさらに検証していきたい。前年度までにニワトリ口腔組織にはリパーゼが存在する可能性を見出しているので、油脂がリパーゼで一部脂肪酸に分解され脂肪酸受容体を活性化させている経路が想定される。この経路が確かなものであると検証するためにも、油脂そのものを用いた行動試験が必要と考えている。【項目3】組織学的解析によるニワトリ口腔組織における脂肪酸受容体等の発現解析:ニワトリの油脂の化学受容に関連していると思われる分子(脂肪酸受容体等)の発現について、ニワトリの味蕾が存在する口蓋、口腔底、舌根部での検討を進めようとしているが、今年度は未だ機能的な抗体が作出できなかったため、進捗が見られなかった。今後も引き続き検討していく。
2: おおむね順調に進展している
カルシウムイメージングにより、ニワトリ脂肪酸受容体の数種の新規アゴニストおよびアンタゴニスト候補物質を見出したので大きな進展があった。行動試験や組織学的解析ではあまり進捗がなかったが、総合的に考えておおむね順調に進展していると考えている。
カルシウムイメージングを用い、ニワトリ脂肪酸受容体の新規アゴニストおよびアンタゴニストの同定を引き続き進める。また、行動試験では脂肪酸、脂肪酸受容体アンタゴニスト、油脂を用いて食行動にどのような影響を与えるのか、詳細に検証していく。また、口腔内における油脂の化学受容に関与していると考えられる種々の分子について引き続き抗体を作製し、組織学的解析を行っていく。
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