研究課題/領域番号 |
18H02331
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
市居 修 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (60547769)
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研究分担者 |
昆 泰寛 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10178402)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腎臓 / 獣医学 / バイオマーカー / miRNA / エクソソーム / 原尿 / レーザーマイクロダイセクション / 汎動物学 |
研究実績の概要 |
腎臓病の増加は動物やヒトの未来を脅かしている。新規腎障害マーカーの確立は、腎臓病の次世代バイオマーカー診断技術 “Liquid Biopsy” の実現に必要である。本研究では、早期検出・高特異性を達成する新たな腎障害マーカーを、尿よりも早く腎病理を反映する“原尿”からみつける。具体的には、腎障害初期のモデル動物の腎組織切片から、Laser-Microdissection技術で “尿細管内の原尿”を集める。 まず本年度は虚血再灌流モデルマウスを作出し、処置後1日で腎臓と尿を採取し、その病理像を解析した。尿細管、特に遠位尿細管の拡張を確認した。Laser-Microdissection技術で拡張した尿細管腔(原尿で満たされていると考えられる)を回収し、RNAを抽出後、マイクロRNAの発現を解析した。解析したマイクロRNAにおいて、原尿中でmiR-21の存在が示唆され、その発現上昇がモデルマウスの腎臓でも認められた。また本モデルマウスでは、尿中エクソソーム由来miR-21も増加していた。現在、例数を増やし、他の原尿中マイクロRNAの動態についても網羅的に解析を継続している。また、本解析に有用となる新たな腎疾患モデルを模索しており、各種KOマウスやコットンラットの加齢雄の腎病理像を明らかにした。 臨床応用のため、本年度はイヌの尿中エクソソームも解析した。共同研究で実施されたシスプラチン投与イヌの尿を得て、尿中エクソソーム由来miR-21の量を計測した。投与後24時間以内に尿中エクソソーム由来miR-21量の上昇がみられ、一方、その上昇は血中尿素窒素や血中クレアチニンの上昇よりも早かった。今後、miR-21を含め、イヌ腎臓内の原尿中マイクロRNA量を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度ではモデルマウスを利用した実験にやや遅れが生じた一方、本年度は共同研究の加速によってイヌの尿を用いた解析を効果的に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度同様、疾患モデルマウスと臨床例の解析を中心に、以下の計画を進める。 ①原尿中エクソソーム由来miRNAの網羅的解析:腎障害モデルマウス(虚血再灌流障害)を用い、原尿で検出され、かつ“腎障害群の血中や尿中で有意に変動するエクソソーム由来miRNA”を探索する。すでに候補としてmiR-21に着目しており、これを特に重点的に解析する。 ②原尿中エクソソーム由来miRNAの動態解明:解析候補となるmiRNAが関与する病理イベントを明らかにする。血中・尿中エクソソームおよび腎組織における候補miRNAのレベルを群間で比較し、腎障害スコアや腎機能データとの相関を解析する。候補miRNAの腎臓内局在をin situ hybridizationで示す。 ③候補miRNAの機能解析:候補miRNAの上流イベント、標的mRNAおよび下流イベントを同定する。miR-21がToll様受容体のリガンドになる可能性を検索している。 ④症例の解析:イヌ・ネコから血液と尿を収集し、腎生検・剖検実施例からは腎組織も得る。マウスと同様、血中・尿中エクソソームおよび腎組織における候補miRNAのレベルと、腎障害スコアや腎機能データとの相関を解析し、その腎臓内局在も示す。また、共同研究の実施により、シスプラチン投与イヌのサンプルを得ており、その解析を進める。 以上より、候補miRNAの伴侶動物の腎障害マーカーとして可能性を探る。
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