研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の流行による研究活動制限のため、研究期間を延長し、令和4年度も研究を継続した。 令和2年度から引き続き、狂犬病ウイルス感染時の宿主脳内における自然免疫応答を解析した。ウイルス感染マウスの脳組織を用いた病理解析により、Gタンパク質に変異を導入した狂犬病ウイルスHEP/Q333R株は野生型HEP株に比べて、アストロサイトへの感染性が低下していることを確認した。ここまでの研究結果から、狂犬病ウイルス弱毒株に感染したアストロサイトからのインターフェロン産生とそれに続く抗ウイルス応答が、ウイルスの排除と感染からの回復に関与していることが強く示唆された。得られた成果を取りまとめて論文発表した(Itakura et al. 2022, iScience)。 感染細胞におけるウイルス粒子の出芽過程において、一部のエンベロープウイルスは、脂質膜の切り離しを担う宿主のESCRT機構を利用する。弾丸状ウイルス粒子形態は狂犬病ウイルスの特徴の1つであるが、その粒子形成に関する分子機序は未解明である。本研究では、siRNAスクリーニングにより見出したESCRT-I構成因子TSG101が、狂犬病ウイルスの出芽及び粒子形成に寄与することを明らかにした。TSG101は、狂犬病ウイルスのマトリックス(M)タンパク質とアミノ酸配列モチーフlate(L)-ドメインを介して相互作用した。RABV Mが有するL-ドメインに変異を導入したRABV変異体は、細胞での増殖性及びマウスにおける病原性が低下した。得られた結果は、RABV M―TSG101相互作用が狂犬病ウイルスの出芽と弾丸状ウイルス粒子形成に重要であることを示している。これらの成果を取りまとめて論文発表した(Itakura et al. 2023, J. Virol)。
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