【流産誘発因子破壊原虫を用いたマウス感染実験による妊娠期の病態解析】原虫因子破壊株(NcGRA7KO株)を非妊娠雌マウスへ感染させ、マウスの生存率、原虫の体内分布、組織を調べたところ、親株(Nc1株)と比較してNcGRA7KO株の病原性が低下していた。次に妊娠期感染マウスモデルにてNcGRA7KO株の病原性を解析し、垂直感染の低下が認められた。NcGRA7KO株感染マウスの胎盤組織では炎症反応の亢進が認められた。従って、胎盤で誘導された抗原虫反応により、NcGRA7KO株の妊娠期の病原性が低下したと推測された。 【流産誘発因子と相互作用する宿主因子の同定】 FLAGタグ融合原虫因子(NcGRA7-FLAG)を導入した哺乳動物細胞(293T細胞)とFLAGタグ融合原虫因子を遺伝子欠損原虫へ導入した原虫株(NcGRA7Comp株)を用いて、質量分析によりNcGRA7結合タンパク質の候補タンパク質Xを同定した。タンパク質XをsiRNA法により免疫細胞からノックダウンし、ネオスポラ感染による免疫応答を解析したところ、炎症反応の減少が認められた。従って、感染による免疫反応におけるタンパク質Xの重要性が確認された。 【ネオスポラ流産牛の組織サンプルを用いた流産誘発因子の同定】ネオスポラ症のウシ由来組織サンプル(胎盤、流産胎児、神経症状等)におけるNcGRA7の発現・局在を解析した。原虫が増殖した寄生胞にてNcGRA7の発現が確認され、壊死像にもNcGRA7のシグナルが認められた。さらに、感染した神経細胞にてNcGRA7が寄生胞から細胞質へ分泌される特徴的な局在が確認された。NcGRA7を診断用抗原としたELISA系はすでに構築しており、ネオスポラ流産牛の血清ではNcGRA7抗体レベルが上昇していた。このことから、NcGAR7がネオスポラ流産に関与することが推測された。
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