研究課題/領域番号 |
18H02343
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
福士 秀人 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (10156763)
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研究分担者 |
桐澤 力雄 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (70153252)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ワクチン / ヘルペスウイルス / 致死性脳炎 / 増殖不全型ウイルス |
研究実績の概要 |
今年度はウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)遺伝子改変ウイルス(半生ワクチンウイルスとしてUL11欠損ウイルス)の神経病原性および致死性脳炎予防能の評価を行った.EHV-1 UL11欠損ウイルスをCBAマウスに接種したところ,臨床的な変化は何も見られず,UL11欠損ウイルスが病原性を喪失していることを確認した.一方,ウイルス接種マウスの血清中にはEHV-1に対する抗体が検出され,EHV-1 UL11欠損ウイルスに対する免疫応答が確認された.EHV-1 UL11欠損ウイルス接種後2ヶ月目に神経病原性親ウ イルスによる攻撃試験を実施し,致死性脳炎予防能を評価した.UL11欠損ウイルス接種マウスでは臨床的な変化は見られなかった.陽性対照群では5頭中2頭に体重減少が見られた.これらの結果から,EHV-1 UL11欠損ウイルスは致死性脳炎を予防できる可能性が示された. EHV-1 UL11欠損ウイルスのワクチンとしての効果を向上させるため,ウイルス感染における免疫抑制に関連するとされるウイルス遺伝子を欠損させた改良ウイルスの構築を試みた.しかしながら,現在までに構築には至っていない.その原因を探ったところ,ウイルス改変の基盤となっているBACクローンのベクターに繰り返し配列が存在し,組換え効率に影響を与えている可能性が示された.そこで,このベクターの繰り返し配列を除去した新たなベクターを構築した.今後,新しいベクターによるBACクローンを樹立し,ウイルス改変を行うこととした. 必須遺伝子の機能を解明するため,UL11の細胞内局在に必要なアミノ酸の同定を行った.変異UL11発現プラスミドを作出し,培養細胞に導入後,細胞内局在を解析した.その結果,UL11の2番目のグリシンがゴルジ装置への局在に必要であることがわかった.一方,7番および9番目のシステインはゴルジ装置への局在に必ずしも必要ではないことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,今年度中にEHV-1 UL11欠損ウイルスをさらに改良する予定であったが,改変ウイルスの構築が遅れている.その理由の一つとしては,大学の校舎の改修工事のため,研究室の移転をする必要があり,5月から8月までほぼ実験ができなかったことがある.また,移転により,培養細胞などに問題が生じたため,その対応に時間を要した.秋以降は,実験体制を整え,ウイルス改変を進めたが,新たな改変ウイルスの構築には至らなかった.その原因を探った結果,遺伝子改変に用いているベクターに問題がある可能性が見出されたため,ベクターの改良を行った.新たなベクターによる改変ウイルスの構築を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス改変を急いで行い,EHV-1 UL11欠損ウイルスに改良を加える予定である.また,網羅的な神経病原性ウイルス遺伝子探索を進展させる予定である.EHV-1 UL11欠損ウイルスのワクチンとしての可能性をさらに評価するための感染実験を行う予定である.免疫応答についても,解析を進める.必須遺伝子の機能解明としてUL11の機能に関わるアミノ酸の同定を継続して行う.また,UL11に導入したアミノ酸変異がウイルス増殖にどのような影響を及ぼすかを解析する.
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