I. EHV-1 遺伝子改変ウイルスの新規構築および網羅的神経病原性責任遺伝子探索 EHV-1のUL11のN末端グリシンのミリストイル化および7番目ないし9番目のシステイン のパルミトイル化をクリックケミストリーにより確認した。また,N末端グリシンのミリストイル化が7番目および9番目のシステインのパルミトイル化に必須であった。これらの結果から,UL11N末端グリシンのミリストイル化はUL11の機能発現に必須であり,EHV-1の増殖はUL11N末端のグリシンという一つのアミノ酸のアシル化により決定されていることを明らかにした。 UL30の1アミ ノ酸置換ウイルス(UL30 D752N)をハムスターに接種したところ,親株および復帰株は接種後4日目から体重減少および神経症状を示し,それぞれ4頭中2頭および4頭中3頭が死亡したが,変異体接種ハムスターは体重減少および神経症状発現までの期間が延長し,全頭が生存した。EHV-1 UL30 における752番目のアミノ酸は非自然宿主における神経病原性に関与していることが明らかとなった。 EHV-1 UL21欠損ウイルスを構築し解析したところ,UL21は必須遺伝子であることがわかった。 II. 遺伝子改変ウイルスの致死性脳炎予防能解析 遺伝子改変半生ワクチンウイルスとしてUL11G2A変異ウイルスの致死性脳炎予防能解析を継続した。その結果,UL11G2Aウイルス接種マウスにシマウマ由来EHV-1による攻撃試験を行ったが,臨床症状は見られず,完全に脳炎の発症が防御された。UL11G2Aウイルスは全てのEHV-1ウイルス遺伝子発現が行われるが,UL11のアシル化が起きないことにより増殖が制限されるという,これまでにないメカニズムによる弱毒化および感染予防付与を行う新規のワクチンとして致死性脳炎の予防を可能とすることが明らかとなった。
|